プロジェクト紹介

オオタカ繁殖状況調査



 2017年9月21日,オオタカが種の保存法の「国内希少野生動植物種」から解除されました。これまでの保護活動の成果として喜ばしいことですが,2000年代まで個体数を回復させていたオオタカが,それ以降減少傾向にあり,また,繁殖成績も悪化傾向にある可能性が見えてきて,今後も,安泰とは言えない状況です。そこでオオタカの繁殖状況のモニタリングをすることにしました。


毎年の繁殖状況を継続して記録していきます

 猛禽類は警戒心も強く,調査は簡単でありません。そこで,日本オオタカネットワークなどと共同で,オオタカをすでに観察をしている方々の協力を得て,繁殖状況のモニタリングをすることにしました。オオタカの観察をされている方はこちらより情報をお送りください。

これまでの成果

 2023年には133巣の情報が届きました。
 1羽でもヒナが巣立った巣を成功として,これまでの,繁殖の成否のわかっている情報を地域にわけて集計すると,東北以北,関東については,一時,繁殖成功率が低下していたのが,回復傾向にあるのに対し,中部地方は,繁殖成績の低下が続いています(図1)。



図1 2016-2023年の地域別のオオタカの繁殖成功率の変化。


 繁殖に失敗した巣を0羽として,巣立ちヒナ数の変化をまとめてみました。「ヒナ数不明」という情報もあり,それらを除いているので,繁殖に失敗した巣を過大に評価してしまっている問題点は含んでいますが,地域別の巣立ちビナ数の動向は,繁殖成功率と似ていました(図2)。ただし,繁殖成績繁殖成功率が低下を続けていた中部地方については,やや底打ち感が感じられる結果になっていました。



図2 2016-2023年の地域別のオオタカの巣立ちヒナ数の平均値と標準偏差。

 以上のような傾向が見られましたが,年によって調査している巣が違うという問題がありますので,8年間のうち 4年以上情報のある 83巣について,TRIMという統計ソフトを使って,巣の影響も考慮した巣立ちヒナ数をみると,2021年を底として,やや回復基調が伺えました(図3)。



図3 2016年を1とした巣立ちヒナ数の相対的な変化。推定値と標準偏差を示し,中の円グラフは対象とした83巣の地域割合。

 まだ,調査期間が短いので,この回復が本当なのか,それとも変動の範囲内なのかはわかりません。継続して調査していくことで,それを明らかにし,減少している場合はその原因や対策について明らかにしていきたいと思っています。


成果物

植田睦之, 遠藤孝一, 高橋誠, 内田博, 平井克亥, 今森達也, 天野弘朗 (2022) オオタカの繁殖状況と国内希少野生動植物種からの解除の影響.Bird Research 18: A99-A107.