プロジェクト紹介
伊万里でのツル越冬地づくり
ツルの越冬地分散をはかるための活動
バードリサーチは、伊万里市と伊万里鶴の会、日本野鳥の会が中心となって進めている佐賀県伊万里湾に面した干拓地をツルの越冬地にしようという活動をサポートしています。
越冬地づくりの目的
鹿児島県出水平野には、1万羽を越えるツルが越冬しています。マナヅルは世界の個体数の半数が、ナベヅルは8~9割もの個体が越冬しています。これだけ多くのツルが越冬するようになったのは出水での保護活動の成果です。しかし、ひとたびここで、伝染病が大流行でもしようものなら、ツル個体群への大打撃になってしまい、場合によっては絶滅の危険性すらあるのではないかと心配されています。
このような心配は20年以上前からされていたのですが、具体的な対応はこれまでされてきませんでした。ところが、韓国浅水湾でトモエガモが大量死したこともあってか、ここ数年、環境省・農水省・文化庁の合同調査が行なわれるなど、やっと具体的な越冬地分散の動きがはじまりました。
伊万里市での鶴の越冬地づくり
伊万里市での越冬地づくりの活動は、昨年から本格的に動きはじめました。今冬は地権者の協力も得られ、採食地の整備として二番穂を実らすための試験、立ち入り制限と銃猟制限、給餌、ねぐら環境の整備として水田への湛水、ツルを誘引するためにマナヅルとナベヅルの実物大模型や鳴声を流す音響装置を設置しています。また、干拓地に食物があることが上空を飛ぶツルにもわかるように、一部のイネを刈り残しておいています。そして、伊万里市により監視小屋も設置され、今まで寒い中、大変だったボランティアの皆さんの活動もよりやり易くなっています(詳細はこちらのページをご覧下さい)。
昨年は12月末より5羽のマナヅルが越冬してくれました。今年は11月5日に11羽のナベヅルが飛来しましたが、残念ながら、出水に向かって旅立ってしまい、定着させることはできませんでした。1月2日にも1羽のマナヅルが飛来しましたが、上空を通過する群れに引き寄せられて飛び去ってしまいました。今、寒くなってマナヅルが続々と南下してきているので、それらが定着してくれることを期待しています。
伊万里から他地域へ
ツルの越冬地分散の目的は、出水平野に集中していることのリスクを減らすことにあります。
伊万里市で越冬できるツルは、(大量の給餌をすれば話は別ですが)多くても数百羽程度で、伊万里だけで十分にリスクを減らすことはできません。まずは伊万里の活動で良い事例をつくって、この活動を西日本各地、そして朝鮮半島へと広げていきたいと考えています。そこで、ツルの分散活動を紹介するパンフレットを作成しました(日本野鳥の会発行/バードリサーチ編集/デザイン・イラスト 重原美智子)。ツルの分散候補地になりそうな自治体、興味のある団体などに配布したいと考えています。もしそのような自治体や団体をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお教え下さい。よろしくお願いします。