日本国内に生息するフクロウの食性情報は多くありません。フクロウは夜行性なので観察が難しいことが理由の一つです。そこで、フクロウの止まり木の下で得られるペリットや巣箱や自然巣に残る食べかすから、食べ物の内容を分析することで食性を調べる全国調査を実施します!
※食性データベースの方では(フクロウに限らずですが)、観察による採餌の記録を収集します。
この調査は、鳥類や哺乳類の食性について多くの研究を行っておられる麻布大学いのちの博物館の高槻成紀さんが主導で実施します。フクロウのペリットや巣箱に残る食べ物の残渣を収集できる参加者を募集し、リモート実習でネズミなどの骨の取り出し方、識別の仕方などを学習していただきます。収集したサンプルは参加者側でネズミの骨などをある程度分別した上で指定の送付先に送っていただき、高槻さんの方で取りまとめを行います。
フクロウのペリットや巣箱の食べかすから見つかるネズミの下顎骨
高槻さんよりコメント
フクロウ(Strix uralensis)はよく知られている割にはその生活はわかっていないことが多い鳥です。食性については長い間、森林に生息するアカネズミ類が主要な食物と考えられてきました(米田ほか 1979)。同じ種はユーラシア大陸の森林地帯に広く分布しており、東ヨーロッパに達します。そこでの主要な食物はハタネズミ類です(Vrezec et al. 2013)。このことは日本の植生が森林に覆われていることと関係していると思います。日本でも里山的な環境ではハタネズミ類が多いという記録はあり、私たちが八ヶ岳で調べた例でも牧場の近くではハタネズミ類が多いことがわかりました(Suzuki et al. 2013)。また市街地では鳥類の割合が多いという報告もあります(内山ほか 2014)。そこで、日本のフクロウの食性の分析事例をもっと増やすことで、日本列島でのフクロウの食性を明らかにしたいと思いました。おりしもバードリサーチでは広く鳥の食性を調べておられるので、そのプロジェクトの中にフクロウも位置付け、目視では難しいフクロウの食性を巣内残存物やペリットで調べることを提案しました。これには多くの協力者が必要で、多ければ多いほど得られる情報が充実します。実際の分析は難しいものではありませんが、経験が必要なので、それをリモート実習で行いたいと思います。いくつか条件がありますが、ご検討の上、ぜひ共同研究を進めていただきたいと思います。
参考文献
Suzuki, T., A. Higuchi, I. Saito and S. Takatsuki. 2013. Food habits of the Ural Owl (Strix uralensis) during the nestling period in central Japan. J. Raptor Res. 47: 304–310.
内山未来・後藤渉・下岡ゆき子. 2014. 甲府市善光寺における野生フクロウの食性. 帝京科学大学 紀要 10: 31–36.
Vrezec, A. and Mihelic, T., 2013. The Ural Owl, Strix uralensis macroura, in Slovenia: an overview of current knowledge of species ecology. Rivista Italiana Ornitologia 82: 30-37.
米田政明・阿部 永・中尾弘志. 1979. 耕地防風林におけるエゾフクロウの冬期間の食性. 山階鳥研報. 11: 49–53.