イベント

第16回バードリサーチ大会
東南アジアでの夏鳥生息地解明と環境保全
日本と東南アジアを渡る夏鳥の渡りルートと越冬地の解明が進んでいます。今年のバードリサーチ大会では、夏鳥の渡りを調べている研究者に集まっていただいて、最新の研究成果を紹介していただきます。また越冬地が明らかになる一方で、その生息地をどのように守れるかという問題もクローズアップされてきました。越冬地で起きている環境問題についても、現地でのフィールドワークの報告や、バードリサーチが取り組んでいる持続可能なコーヒー栽培による森林保全などを紹介します。
開催日時
2025年9月21日(日) 講演会13:00~17:30 懇親会17:30~19:30
講演会と懇親会は同じ会場で行います。インターネット中継はありませんが、講演の一部を後日に録画放送する予定です。
会場
グレイドパーク千駄ヶ谷
東京都渋谷区 千駄ヶ谷1-13-11 チャリ千駄ヶ谷 B1F
JR千駄ヶ谷駅または都営大江戸線 国立競技場駅から徒歩10分以内。
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参加申込
下記フォームからお申し込みください。費用は参加費2,000円、懇親会費3,000円になります。定員の80名までで締め切らせていただきますので、ご了承ください。参加はバードリサーチ会員の方に限らせていただきますが、会費無料の「協力会員」もありますので、会員登録していただければ参加可能です。
プログラム
1.日本固有の亜種アカモズの進化と渡り経路を探る
青木大輔(森林総合研究所)
本講演では、日本でのみ繁殖する渡り性のモズ類である亜種アカモズ(以後、アカモズ)について、その遺伝的側面と渡り経路について最新の研究成果を紹介する。DNAを用いた研究から、アカモズは大陸の亜種とは独立した、独自の進化の歴史を歩んだ亜種であることが判明した。ジオロケーターという装置を用いて北海道と長野県から渡りを追跡したところ、越冬地がインドネシアの島々に散らばっていることが明らかになった。
2.チゴモズの渡り経路と保全対策案
谷口裕紀( いであ(株)国土環境研究所)
日本で絶滅が危惧されているチゴモズについて、秋田県から新潟県までの日本海沿岸で分布調査を行った結果、つがい数は160つがいと推定された(田悟ら2023)。これらの地域は、チゴモズが集団で生息する日本で最後の生息域であり、特別な環境ではなく、地域の典型的な場所であることはほとんど知られていない。本発表では、ジオロケーターを利用した追跡調査で明らかになったチゴモズの渡りの経路、中継地、越冬地と国内の保全対策案について報告する。
3.渡り鳥研究への挑戦――移動の追跡から越冬地保全に向けて――
山浦悠一(森林総合研究所 四国支所)
日本の夏鳥が減っている――全国鳥類繁殖分布調査の結果を解析し、この成果を2009年に報告した。近年は保持林業など、国内での保全の取り組みに光が当たりつつある。ただ、夏鳥を保全するためには、繁殖地での活動だけでは十分とはいえない。ところが当時、世界の渡り鳥の重要地域である日本を含めた「東アジア・オーストラリア・フライウェイ」では、渡り鳥の個体数の大半を占める小鳥の渡り経路や越冬地はほとんど明らかになっていなかった。私は学生時代から、鳥類は捕獲することなく、個体数カウントを中心とした研究を続けてきた。しかし、こうした状況を踏まえて一念発起し、仲間とともに試行錯誤を重ねながら、ノビタキやキビタキの渡り経路の追跡に取り組んできた。その成果により、ようやく越冬地での保全上の脅威が明らかになりつつある。講演では、これまでの経緯を振り返りつつ、最近研究しているコノハズクやヨタカの渡り経路、さらに越冬地の保全活動への社会的支援を高めるための方法について、皆さんと一緒に考えてみたい。
4.渡るアオバズクの一年:長期間移動追跡の事例から分かること
竹田山原楽(東北大学)
アオバズクは森林・社寺林・公園などに生息するフクロウ類である。国内では北海道~九州で繁殖する亜種アオバズクが、3000㎞以上隔てたスンダ列島周辺で越冬すると考えられているが、その渡り経路や渡り時期、そして越冬地での行動はほとんど分かっていない。本研究では亜種アオバズクを対象に2022年からの4年間でGPSロガーを用いた移動経路追跡を試み、繁殖地で装着したロガーのべ4個体分のうち1個体分を装着1年後に再回収した。当該個体は秋に中部・四国・九州地方を経て、フィリピン・ルソン島まで海上を南下した。その後パラワン島を南進してインドネシア・カリマンタン島で越冬した。春には南シナ海上を移動して海南島および広西チワン族自治区に到達し、中国南部を北東に移動し本州の同一繁殖地に帰還した。また、繁殖地では育雛終了後に行動圏が0.2㎢程度から1㎢程度に広がり、越冬地では1㎢程度の行動圏で活動していた。この結果は、亜種アオバズクの越冬地・繁殖地での行動圏の維持・変化の記録に加え、本亜種が春と秋で異なる渡り経路を利用する可能性を示唆する初めての事例である。
5.越冬地で進む渡り鳥の危機:生息地劣化とペット需要
北沢宗大(国立環境研究所)
かつて多くの夏鳥で繁殖分布域の減少が確認されてきたが、近年では回復の兆しも見られている。今後も日本の夏鳥の増加傾向は続くだろうか?この疑問に答えるためには、繁殖地のみならず越冬地の状況も把握する必要がある。発表者らは、越冬地における主要な脅威と想定される、湿地の劣化、農業の大規模化、違法な捕獲が夏鳥に与える影響を、現在も減少が続くアカモズを中心に評価した。2025年1月から2月にかけてタイ北部を中心に309地点で鳥類調査を行い、大規模な湿原の劣化が進む状況や作物被害を防ぐためのかすみ網に様々な種の野鳥が錯誤捕獲されている状況を確認しました。また2月にインドネシア最大級の鳥市場において、チゴモズなど複数の絶滅危惧種を含む1,840個体の夏鳥が違法に販売されている状況を明らかにした。依然として日本の夏鳥の将来は安泰とは言えず、国境を越えた研究による現状把握と、相互の技術移転を含む保全戦略の構築が必要となるだろう。
6.インドシナ半島でのシマアオジ越冬地調査
シンバ・チャン(バードリサーチ)
シマアオジはユーラシア大陸の広範囲で繁殖している渡り鳥で、繁殖分布域の全体で個体数が急減していることが心配されている。日本でも以前は北海道の草原で比較的普通に見られた種ですが、いまではほとんどいなくなってしまっている。バードリサーチは2022~24年度に地球環境基金の助成を受けて、シマアオジの越冬地になっているタイ、ミャンマー、カンボジアで、ねぐらの調査と、現地の野鳥関係者と調査手法や保全対策を検討するワークショップを行った。調査で分かった越冬地の環境や、保全上の課題について紹介する。
7.フィリピンのコーヒー農園調査とエシカル消費による越冬地保全の支援
神山和夫(バードリサーチ)
フィリピン、ルソン島の森林は多くの固有種に加えて、冬を過ごす夏鳥の越冬地に利用されている。今世紀に入ったころから、この地域では現金収入への要求から農地を拡大するための森林破壊が急速に広がり、野鳥の生息地だった森は森は一面の畑に変わりつつある。その一方で、1000~2000mという高地の特性を活かしたコーヒー生産も一部の農家が取り組んでいる。コーヒーは高木の日陰で育つ作物であるため、一定程度の樹木を残して栽培が可能なため、野鳥生息地としての環境保全と農家の現金収入とを両立させる生産手段になる可能性がある。バードリサーチは当地のコーヒー農園での野鳥調査を行い(※)、キセキレイ、サンショウクイ、亜種シマアカモズ、マミチャジナイ、シマセンニュウ、エゾビタキ、オオムシクイ、コムシクイの生息を確認した。ルソン島のコーヒー農園の環境と持続可能なコーヒー生産の営みについて報告する。
※ トヨタ財団国際助成プログラム、サントリー愛鳥基金、自然保護助成基金国際NGO助成からの助成金で実施。
8.総合討論
東南アジアでの調査や保全のために、私たちはどのような取り組みをしていけばよいだろうか。講演者、会場参加者の皆さんと一緒に議論を深めたい。