イベント情報
第15回バードリサーチ大会のお知らせ
バードリサーチでは、会員の集いとして毎年バードリサーチ大会と銘打って研究集会を開いており、今年は11月21日(土)に石川県金沢市で開催します。
聴講参加の方で会場に来られる方は当日参加も可能ですが、人数把握のため、事前申し込みにご協力いただけると助かります。みなさまのご参加をお待ちしております。
※今回の大会は、YouTube上でオンライン配信も行います。11月19日(木)までに参加登録をされた方に、視聴用のURLをお送りします。ご質問等はチャット欄から入力可能ですが、動画は20秒程度遅れますのでチャット欄には会場から対応できないこともあります。スクリーンショットや写真の記録、録画などは禁止とさせていただきます。参加登録をしておられない方はご視聴いただけません。
※この度の新型コロナ感染症(COVID-19)拡大を受け、参加者が密接する機会を減らすため、ポスター発表は実施しません。懇親会は中止します、ご了承ください。また、参加者の皆様にはマスクの着用をお願い致します。会場の石川県文教会館では入口に手指消毒用アルコールが設置されておりますのでご利用ください。大会会場の大会議室入口では、非接触型体温計による体温計測を行います。発表合間の休憩時間には会場の窓を開けて換気を行います。また、万が一の感染症発生時に感染経路の判定に協力できるよう、参加者の皆様の氏名と連絡先の記録を取らせていただきます。(お預かりした個人情報を他の目的で流用することはございません。)
非会員の方は、会費無料の会員区分もありますので、是非この機会にご入会ください。
主 催
認定NPO法人バードリサーチ
助 成
日 時
研究集会 2020年 11月21日(土)10:00 ~ 17:00(参加費無料 受付9:30~)
会 場
石川県文教会館 401・402 会議室(大会議室)
〒920-0918 石川県金沢市尾山町 10-5
TEL:076-262-7311
[Google Mapで場所を確認する]
交通案内
JR 金沢駅より徒歩約 20 分(1.5 km)
バスでのご来場
金沢駅より香林坊方面行のバスをご利用ください。 「南町・尾山神社」下車、徒歩 2 分。
お車でのご来場
駐車スペースがございません。 お車でのご来館の際は周辺の有料駐車場をご利用ください。
小松空港からお越しの方
小松空港より金沢市内経由バスにて 「香林坊」下車、所要約 50 分(「香林坊」より徒歩 10 分)
その他
昼食は、会場の近くにカフェやレストラン、コンビニが多数あります。
金沢市民の台所と言われ、海鮮を中心に飲食店も多い近江市場(外部サイト)も会場から徒歩数分です。
ご宿泊は各自で手配をお願いします。
近隣でご利用可能な託児サービスはこちら(外部サイト)
プログラム(ページ下部に詳細があります) |
口頭発表は(15分+質疑5分) |
招待講演
10:00-10:30
石川県の里山における果実と鳥類の相互作用:種子散布者としての森林性鳥類の重要性
演者:北村俊平 氏 (石川県立大学 生物資源環境学部)
動物による種子散布の研究には、どの動物種がどの果実種を利用しているのかといった基礎情報が必要不可欠です。2012年より石川県立大学植物生態学研究室では、石川県内のスギ林や雑木林の低木や草本を対象として、果実を利用する動物やそれらの種子散布者としての生態系機能を調査してきました。同時に複数台の自動撮影カメラを設置することで、数週間から数か月間におよぶ結実期間を通して、果実を利用する動物の採食行動を詳細に観察することが可能となりました。その結果、これまで定量的なデータを得ることが難しかった低木や草本の果実がヒヨドリをはじめとした多様な鳥類に利用されている実態が見えてきました。本発表では、これまで石川県で行ってきた研究の概要と今後、進めていきたい研究について紹介します。
10:30-11:00
林床の赤い実を食べるのは誰?~低木5種と草本1種における2年間の観察~
演者:前田大成 氏・北村俊平 氏 (石川県立大学 生物資源環境学部)
果実食動物による種子散布は森林生態系における代表的な相利共生関係の一つである。日本の森林でも高木や亜高木を対象とした研究から、鳥類や哺乳類の種子散布車としての重要性が定量的に示されてきた。林床で小規模に結実する低木・草本でも果実食動物による種子散布の重要性が示唆されてきたが、定量的な情報は限られており、それらの植物にとって重要な動物はほとんどわかっていない。本研究では、近年新たな観察手法として注目されている自動撮影カメラを用いることで、これまで見過ごされてきた低木・草本の果実を持ち去る動物相の解明とそれらの果実持ち去り数の定量化を試みた。石川県金沢市の落葉広葉樹林内に自生する計6種の低木・草本(ヒメアオキ、ニワトコ、カントウマムシグサ、サルトリイバラ、カラタチバナ、ヤブコウジ)における2年間の観察結果に基づき、これらの低木・草本の果実とその果実を持ち去る動物との関係について紹介したい。
11:00-11:30
石川県林業試験場の森における鳥類記録手法(音声録音とスポットセンサス)の比較
演者:山川将径 氏 (株式会社 国土開発センター)・北村俊平 氏 (石川県立大学 生物資源環境学部)
鳥類は森林生態系の指標種として利用されている。本研究では、鳥類を対象として同時刻・同地点でスポットセンサスと音声録音を行い、スポットセンサスに対する音声録音による調査の有効性を検証した。2014年6月から9月に2回(各3日間)、石川県林業試験場内の3地点にICレコーダーを設置して、鳥類の鳴き声をタイマー自動録音した。また同時刻に同地点で15分のスポットセンサスを行い、音声録音で記録された鳥種と比較した。スポットセンサスで25種、音声調査で23種の計25種が記録された。両手法で調査努力猟に対する記録種数の増加傾向は類似し、記録種数の平均値にも有意差はなかった。スポットセンサスの方が音声録音よりも種多く記録されたが、音声録音の記録率は92%と高く、森林性鳥類を記録する有効な手法であると考えられる。また、従来の調査手法に音声録音を補助的に利用することで、より正確に鳥種を記録できると考えられる。
口頭発表
13:00-13:20
・全国鳥類繁殖分布調査でわかった日本の鳥の現状と変化~完結編~ <植田睦之(バードリサーチ)>
2016年からスタートした全国鳥類繁殖分布調査はこれまでに全コースの99%以上のコースの調査が終了しました。ここまでの結果を1990年代に行なわれた調査結果と比較することで,全国的に小型の魚食性の鳥が減少し,大型の魚食性の鳥や森林性の鳥が増加していることがわかってきました。また,全国的な傾向とは別にハクセキレイの分布が西ほど分布を拡大していたり,全国的に広がっているアカショウビンの分布が関東や北海道ではそれほどでもないなど,地域差も見えてきています。そんなここまでに見えてきた成果をご報告します。
13:20-13:40
・金沢市の歴史的な緑地が鳥類の多様性に及ぼす影響 <上野裕介・稲田亮介(石川県立大学 生物資源環境学部)>
金沢市は、台地と扇状地に広がる城下町であり、江戸時代からの古い景観や寺社林が残る一方で、新たに開発された住宅地も存在する。そこで本研究では、金沢市における都市緑地の分布と歴史性が、鳥類の種多様性に及ぼす影響を検証した。鳥類相の調査は、都市化の程度と開発年代の異なる任意の20か所に、計60の調査定点を配置し、春・夏・秋にポイントセンサス法で調べた。調査定点周辺の土地利用(植生)が鳥類の出現パターンに及ぼす影響を、GISと一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて解析した結果、土地利用のモザイク性が高い場所ほど、出現種数も多く、特に昆虫食性の種が増加した。また種組成は、森林とその周辺ではよく似ていたのに対し、都心部ではばらつきが大きく、特に金沢城周辺の江戸時代から開発されてきた地域では、他とは異なる種が出現していた。
13:40-14:00
・多数の録音機を使って鳥を調べる(実際と可能性) <石田健>
鳥類の調査法として、日本ではラインセンサス(LC)やルートセンサス(RC)が多用され、定点調査(PC)も用いられる。いずれも、多くの理由で個体数データの精度は高くない。これらの調査は一瞬で終えるのが理想だが、短時間に終了することも実現しない。最近20年間に録音機や分析技術が発達し、音声データを活用した研究が鳥でも急速に普及した。録音調査は、人によるカウントと比べて不利点も多いが、有利点を活かす方法の一つに、多(複)数の録音機による同時記録(MMA)法があると演者は考え、試行錯誤をしてきた。加計呂麻島のアカヒゲと奄美大島のオオトラツグミの事例を中心に、MMAの可能性を紹介する。
14:00-14:20
・蓮田におけるオオバンの食餌行動 <境友昭>
育雛中を除き,餌を獲得した鳥は,その場,その時点で食餌行為を完結しようとするが,蓮田で屑レンコンを咥えたオオバンは,そのレンコンを畔あるいは通路に運び,そこで食餌する行動をとることがある。また,屑レンコンの堆積場所が狭く,一度に多数羽のオオバンが侵入できない場合,あたかも順番待ちをしているような素振りも見せる。本報告では,何故オオバンがそのような行動をとるのか,レンコンの力学的強度,オオバンの食餌姿勢での力の釣り合いなどの視点から考察する。
10分休憩
14:30-14:50
・オオミズナギドリの繁殖地七ツ島大島におけるアナウサギ根絶の報告 <百瀬 剛(環境省中部地方環境事務所野生生物課)>
石川県輪島市沖合にある七ツ島は、能登半島国定公園特別保護地区及び国指定七ツ島鳥獣保護区に指定されている。複数の無人島及び岩礁により構成され、オオミズナギドリやウミネコの集団繁殖地として知られている。七ツ島大島では、1984年(昭和59年)に人為的に持ち込まれたアナウサギ4個体が野生化・増殖したことにより、食害による植生変化や裸地化による海鳥の繁殖への影響等が懸念されていた。そのため、1990年(平成2年)から石川県が断続的に、2000年(平成12年)からは環境省が主体となって駆除を進め、2019年(平成31年)4月にアナウサギ根絶を発表した。本発表では、七ツ島での駆除事業の概要とモニタリング結果を報告する。
14:50-15:10
・中山間地においてため池は水田よりも鳥類の多様性が高い <出口翔大(福井市自然史博物館)>
近年、水田とため池などの耕作・管理放棄による農地の生物多様性の損失が懸念されている。日本の農地の7割が存在する中山間地において,各水域の鳥類多様性および、その保全価値や優先順位は明らかにされていない。そこで本研究は,新潟県の中山間地において水田,養鯉池,ため池の鳥類相を繁殖期、渡りの時期、非繁殖期に調査した。併せて水域の環境特性(水深、面積、畦の斜度、植被率など)も調べた。その結果,鳥の種数・個体数は一年を通して水田よりも池で多い傾向にあり,特に開放性・湿性の種類で一貫していた。種組成は時期で異なったものの、水域間で違いはなかった。また種数、個体数は水域の環境特性というよりは、ため池そのものが正に寄与する傾向にあった。これらより、ため池の保全の重要性および優先度が高いことが示唆された。
15:10-15:30
・ツバメ類にみられる美しさと絶滅リスクの厄介な関係 <長谷川克・新井絵美(石川県立大学)>
異性獲得競争で動物が「美しさ」を進化させることは集団全体を繁栄させることも衰退させることもあると予想されるが、実証例はほとんどない。本研究では系統種間比較法を用いて、ツバメ類の異なる美しさが個体数増減と絶滅リスクに及ぼす影響を調べた。その結果、有名な装飾形質である「燕尾」が発達するほど個体数が減る一方で、別の装飾形質である「赤い羽色」が発達するほど個体数が増えるというパターンが得られた。絶滅リスクについても同様のパターンが得られた。異なる種類の美しさをまぜこぜにしてざっくり調べるというアプローチが流行しているが、美しさは種類によって集団全体に正反対の効果をもたらすこともあるので、今後は美しさの種類をちゃんと考慮しなければいけない。
15:30-15:50
・バードバスを使った鳥類調査の結果と今後の展望 <山﨑優佑・佐藤望・守屋年史(バードリサーチ)>
専門的な鳥の知識がなくても、調査に参加できるような手法の確立を目的として、バードバスを設置し、そこに訪れる鳥類を、自動撮影カメラを用いて撮影する調査を行っています。
この調査がモニタリング調査として活用できるかどうかを検討するためにはどのような鳥がどのくらいの頻度でバードバスを利用するのかを明らかにする必要があります。そこで、バードバスを設置している人たちに、飛来する鳥のアンケート調査を行いました。また、東京都、岡山県、静岡県では実際に自動撮影するカメラをバードバスの近くに設置し、飛来する鳥の調査を行いました。
アンケート調査の結果、家の周辺にいるすべての種がバードバスを利用しているわけではない可能性がある事が分かってきました。また、自動撮影カメラによる調査では、メジロやシジュウカラ、キジバトなど飛来する鳥を記録することができましたが、季節によって訪問する種が異なる事が分かってきました。たとえば、キジバトは周囲に生息しているもののバードバスに来ない時期もあり、利用に季節性がある可能性が示唆されました。
これらの結果から、バードバスと自動撮影カメラによる調査によって、鳥類を効率的に撮影でき、識別が得意でない方でも静止画や動画によって種判別ができる事が分かりましたが、一方で、種によってはバードバスを利用しない種や、季節変動がある事が分かりました。これらの傾向を今後も解明していくことで、新しいモニタリングの手法を開発していきたいと考えています。
10分休憩
16:00-16:20
・長時間録音分析支援Webアプリ(toriR)の開発状況とオオジシギの一晩の鳴き声頻度への適用 <大坂英樹>
ICレコーダを使った調査は夜間や僻地、毎日定時録音など人手では難しい生態調査に有効です。課題は回収音源から何がいつ鳴いたかを書き出すアノテーション作業ではないでしょうか。この負担を減らすWebベースのアプリtoriR(トリル)の開発を思い立ちバードリサーチ調査研究支援(2019)に提案・採択され開発して来ました。録音データのアップロードからスペクトログラムへの変換、アノテーション画面、結果のダウンロードまでの一連の処理ができたので数名の方に試用頂いております。自分でも使って今年6月に長野県で録音した18時からの4時半までの11時間30分の音源からオオジシギの一晩の鳴き声頻度を求めました。アノテーション作業は約1時間半で336個のオオジシギの鳴き声を時刻と共に記録しました。10分毎の鳴き声頻度を求めると山は4つあり、19時半、0時、3時頃に約20回を、1時頃に13回の頻度の記録されていました。特に23時20分から0時20分まで1時間に渡り、盛んに飛び鳴いていることがわかりました。スペクトログラムには2~6KHzの”ズビャク”ばかりでなく、羽根の風切り音の"ザザザーッ"と表現される1KHz程度の羽音も記録できました。講演では鳴き声頻度、トリル紹介の他、要望を伺いたいと思います。
16:20-16:40
・目撃情報では捉えられない森林にひそむホシガラスをどうするか?-八ヶ岳連峰における試行- <高木憲太郎(バードリサーチ)>
アンケート調査と登山記録サイトの記録の調査によって、2017年から2019年までの3年間にホシガラスの目撃情報が2934件集まりました。しかし、このデータはホシガラスが「いる」という「在」データのみです。山頂部やハイマツ帯など開けた環境で観察されやすく、森林部で観察されにくい傾向があり、目撃されていない場所には「いない」とは言えません。環境条件との関係から分布を推定するには「不在」データが必要です。解決の方法として、登山者が非常に多く、ホシガラスの目撃情報が低標高から高標高まで多数記録されていた八ヶ岳連峰に着目しました。今回の発表では、八ヶ岳連峰におけるホシガラスの目撃地点と環境条件の関係について分析した結果を発表します。