イベント情報
第14回バードリサーチ大会のお知らせ
バードリサーチでは、会員の集いとして毎年バードリサーチ大会と銘打って研究集会を開いており、今年は福岡県福岡市で開催します。
例年の大会同様、会員・参加者の皆さんからの口頭発表とポスター発表も募集します。ご自身の調査結果を発表してくださる方は、大会参加申し込みの際に、送信フォームに発表タイトルなどの必要事項をご記入ください。発表予定の方と懇親会参加予定の方は、必ず事前申し込みをお願いします。その他の方は当日参加も可能ですが、人数把握のため、事前申し込みにご協力いただけると助かります。みなさまのご参加をお待ちしております。
口頭・ポスター発表希望の方は11/1(金)まで、懇親会は11/15(金)までに参加申し込みをお済ませください。
非会員の方は、会費無料の会員区分もありますので、是非この機会にご入会ください。
主 催
認定NPO法人バードリサーチ
助 成
日 時
研究集会 2019年 11月23日(土)11:00 ~ 17:30(参加費無料 受付10:30~)
懇親会 同日19:00~21:30
(ミライザカ九大学研都市駅で開催予定:4000円程度。)
会 場
九州大学伊都キャンパスセンター2号館2204(基調講演、口頭発表)、2205(ポスター発表)
〒819-0395 福岡市西区元岡744
[Google Mapで場所を確認する]
交通案内
電車の場合は、JR筑肥線・九大学研都市駅で降りて3番乗り場又は4番乗り場からバスに乗って、「九大ビッグオレンジ」で降りてください。
バスの本数はあまり多くないのでご注意ください。
バスの時刻表はこちら。
自家用車の場合は、九大ビッグオレンジ前にある守衛所で手続き後、センターゾーン立体駐車場に駐車してください。
駐車場を利用する場合、参加費とは別で入構料300円をお支払いして頂くことになりますので、予めご了承願います。
センターゾーン立体駐車場の場所はこちら
その他
昼食ですが、会場の近くにローソンや飲食店があります。
2206室が休憩室となっております。飲食可能ですが、ゴミはお持ち帰り頂きますようお願いします。
宿泊は各自で手配をお願いします。
プログラム(予定です。随時修正します) |
口頭発表は(15分+質疑5分)でご準備ください。 |
基調講演
渡り性猛禽類の移動に気象がおよぼす影響:現在そして未来
演者:山口典之 氏(長崎大学総合生産科学域)
渡り鳥の移動経路や移動時期は、天候や風況などの気象条件に大きく左右されることがバードウォッチャーの皆様にも経験的によく知られています。なかでも帆翔と滑空による飛行を得意とする渡り性猛禽類は、風の恩恵を受けて渡りをなしとげていると言っても過言ではありません。今回の講演では、日本の渡り性猛禽類の代表格であるハチクマ、そしてサシバの渡り、特に東シナ海域や琉球列島域の渡り経路と気象との関係について得られた研究成果を紹介します。また、西日本では稀な渡来者であるケアシノスリの春の渡りの際の移動パターンと気象、特に積雪状況との関係について紹介します。温暖化にともなう気候変動は、これらの鳥たちの渡りに影響をおよぼしていると思われます。彼らの渡りは、近い将来、どうなってしまうのでしょうか。様々な渡り鳥が温暖化から受けている影響については、多くの研究がなされています。その概要を紹介します。そしてハチクマを対象にして、東シナ海域の秋の渡り経路がどうなるか将来予測をした研究結果を紹介します。最後に、渡り鳥の渡り経路や移動パターンの状況把握に市民科学がどう貢献できるかについて話します。
口頭発表
・全国鳥類繁殖分布調査でわかった日本の鳥の現状と変化 <植田睦之>
2016年からスタートした全国鳥類繁殖分布調査はこれまでに全コースの86%以上のコースの調査が終了しました。ここまでの結果を1990年代に行なわれた調査結果と比較するとで,全国的に小型の魚食性の鳥が減少し,大型の魚食性の鳥や森林性の鳥が増加していることがわかってきました。九州でも全国と同様の傾向が見られています。異なっていたのは,全国的に見るとやや増加傾向にあるセンダイムシクイが大きく減少している点で,それに伴い,センダイムシクイに托卵するツツドリも減少していました。
・本州のハジロ属潜水ガモ類の減少と有明海北部での増加 <神山和夫>
環境省が実施しているガンカモ類の生息調査の記録(1996 年1 月~2018 年1 月)を分析したところ、ハジロ属の潜水ガモであるホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモが減少傾向にあることが分かった。最も減少が大きいのはホシハジロで、1996 年の178,678 羽から2018 年には96,218 羽まで減少した。キンクロハジロは2004 年の121,288 羽がピークで、2018 年には64,157 羽まで減少した。スズガモは2006 年の269,105 羽をピークに2018 年には152,401 羽まで減少した。いずれの種も主要な生息地で大幅に減少した後に別の生息地で小幅な増加が見られるため、環境の悪化などにより生息地を移動したことが考えられる。一方、本州各地の生息地で個体数が減少している反面、諫早湾や佐賀県の干拓地周辺で個体数が増加しており、本州から個体が移動した可能性も考えられる。
・防鳥ネットがあっても野鳥はハス田に出入りする <内田初江>
昼間,防鳥ネットで囲まれたハス田で遊泳するカモたち。夜間,天井ネットを通過してハス田に入り,また通過してハス田を後にするカモたち。カモが出入りするのでは,防鳥ネットとしての機能は果たされない。実際の防鳥ネットには,数多くの穴や目合いのズレがあり,野鳥が,ほぼ自由に出入りしていることがわかった。本報告では,これらの事実と防鳥ネットの無効性について論じる
・ソウシチョウの高密度な生息がウグイスの繁殖に及ぼす影響 <江口和洋・天野一葉>
外来種ソウシチョウは日本各地の落葉広葉樹林で分布を拡大し,特に,九州各地の標高1000m以上の森林では,繁殖鳥類群集中で優占種となっている.本種の高密度での生息が在来鳥類の繁殖,個体数に影響を及ぼしているのではないかと懸念されているが,それを解明する実証的研究は皆無であった.本研究では,高密度なソウシチョウの巣の存在のためウグイスの繁殖成功が低下することを,巣の除去実験により検証した.2002,2003年の繁殖期に,えびの高原(宮崎県,鹿児島県)のアカマツ・ミズナラ混交林において,ソウシチョウの巣をくりかえし除去し,除去を行わない対照区との間で,ウグイスが巣に依存する期間における卵やヒナの生存確率を比較した.両年とも,ソウシチョウの巣密度が低くなった除去区において対照区よりウグイスの全期間生存確率は高かった.本研究の結果は,ソウシチョウの高密度な巣の存在が,ウグイスの巣への偶発的な捕食の増加を引き起こし(「見かけの競争」),ウグイスの繁殖成功の低下をもたらしたことを示唆している.しかし,最近では,各地でニホンジカの個体数が増加しており,林床植生衰退による営巣場所消失が,両種の生息密度低下を生じさせていると考えられる.
・ネットワークカメラによる野鳥の餌台モニタリングの試み-幼児教育での鳥相活用を目指して- <髙木義栄>
身近な野鳥の存在を子ども達に伝える手段として、ネットワークカメラによる餌台モニタリングを試みた。多くの鳥が餌台に来たが、カメラの解像度が低く、種の同定がほとんどできなかった。一方、集まった鳥や餌台に関心を持ったことを示す園児の言動が見られた。餌台に鳥が多く来る時間帯は園児の活動時間と重なるので、餌台をより早く設置し、より解像度の高いカメラを使って観察すれば、野鳥への関心をより高められるだろう。
・自動撮影カメラによって記録された人工水場におけるカラス類の行動 <中原亨 >
カラス類は、食物を水に含ませて食することがある。本研究では、2019年2月~10月まで、いのちのたび博物館敷地内に用意した人工水場に自動撮影カメラを設置し、カラス類の行動を記録した。その結果、カラス類の水場訪問は育雛期の5~7月に集中しており、その時期には食物を水に浸す・摂餌と飲水をセットで行うといった行動が頻繁に記録された。以上より、カラス類が食物に水を含ませる行動は、育雛と関連する可能性が示唆された。
・ヤマドリSyrmaticus soemmerringiiの尾羽の地色とメラニン量の関係 <坂梨仁彦・森本元>
ヤマドリ(キジ科)は、主に羽色により5亜種に分類されている。南に棲息する亜種ほど濃色になるグロージャーの規則に一致する.本研究では、日本各地から集められた4亜種について尾羽の地色を測色した後、測色した部分を切り出し、メラニン含有量を測定した。その結果、南に棲息する亜種ほどメラニン量が多かった。また、亜種に決まった色は無く、実験に用いたすべての亜種で、複数の色が識別され、南に生息する亜種ほどメラニン含有量が多かった。
ポスター発表
・カモはレンコンを食害するか <境友昭・内田初江>
茨城県ではカモ類によるレンコンの食害が生産量の約4%に及ぶとされており(農水省統計),具体的な食痕の写真も報告されている。我々は,圃場近傍に放棄された屑レンコンを精査し,カモ類の食痕と認められるものは0.1%以下であること,また食害痕と言われているものは,オオバンが放棄レンコンを啄んだ跡であることを確認し,これらの証拠を元に「カモ類がレンコンを食害する」という風説を否定するものである。
・ホシガラスを探せ!!-全国の生息状況と九州の目撃記録- <高木憲太郎>
高山性鳥類の分布状況は、ライチョウなど一部の鳥類を除き、十分には調査されていない。そこで、目撃情報が得やすいと想定したホシガラスを対象に、登山者から目撃情報を集めるとともに、登山記録サイトに掲載される写真情報を収集し、高山に生息するホシガラスの分布を調査した。北海道から中部山岳にかけて広く分布しているが、近畿以西で生息している山は限られている。九州では、祖母山、大崩山、向坂山、白岩山など主に標高1500m以上の山で目撃されている。
・九十九里浜におけるコアジサシコロニーとシロチドリの関係 <守屋年史・佐藤達夫・岩崎加奈子>
シロチドリは、砂浜や河原、造成地など開けた場所で繁殖を行う。また同様の環境にコアジサシも夏鳥として渡来し集団繁殖する。両種とも近年、減少傾向にあり環境省レッドリスト2019(環境省2019)では、絶滅危惧 II 類(VU)として掲載されている。我々のグループでは、千葉県九十九里浜の砂浜環境においてシロチドリの繁殖状況をモニタリングしており、営巣地の周辺の植生、捕食者、コアジサシのコロニーの位置、規模などについて継続して記録し、またセンサーカメラなどを利用して、シロチドリ各巣のふ化の成否や失敗の要因についても記録した。 シロチドリは、コアジサシのコロニー付近に営巣することが報告されている。今回は、九十九里浜におけるシロチドリのふ化と、シロチドリの営巣のタイミングやコアジサシコロニーの規模・距離との関係をとりまとめ報告する。
・東京都鳥類繁殖分布調査:2017-2019年までの結果 <佐藤望>
東京都をおよそ1km毎に分けて、それぞれどんな鳥類が繁殖しているのかを調査しています。これまで3年間で島嶼部の12島と本土部での調査を実施してきました。島嶼部では1970年代と比べて各島の種構成が変化していることが明らかとなりました。また,本土部では、90年代の調査結果と比較すると、メジロが都心部へと分布を拡大させていることなどが明らかとなってきました。今回は90年代の結果と比較し、都市環境での鳥類分布の変化を報告します。
・対馬 内山峠でのアカハラダカの観察記録 考察と今後の課題 <貞光隆志>
対馬野鳥の会では、対馬南部に位置する内山峠で毎年9月の一ヶ月間、アカハラダカの観察を行っている。2009年から2019年までの11年間では、もっとも少ない年で21,152羽、多い時には98.062羽を記録した。この観察記録をもとに、対馬を通過する秋のアカハラダカの渡りを考察する。また、アカハラダカの島内ルートの解明、内山峠での観察不能時の対応(峠以外での観察)、今後の観察体制を維持していく方法等々の課題についても検討する。