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渡良瀬遊水地におけるヒバリの個体数とヨシ焼きとの関係
平野敏明
バードリサーチ
ヒバリ Alauda arvensis の個体数におよぼすヨシ焼きの影響を明らかにするために,栃木県南部の渡良瀬遊水地で繁殖期にヒバリの個体数調査を行なった.渡良瀬遊水地は,面積3,300haの大部分がヨシを主とする高茎植物で覆われている.ここでは,毎年3月中旬に全域でヨシ焼きが実施されているが,2011年にはヨシ焼が行なわれなかった.そこで,ヨシ焼き前後およびヨシ焼きのあった2004, 2005年となかった2011年との比較を行なうことで,ヒバリの個体数におよぼすヨシ焼きの影響を検討した.2004年4月中旬から7月下旬にかけて1週間ごとにヒバリの個体数と草丈を記録したところ,ヨシやオギの高茎植物はヨシ焼き後に徐々に成長し,ヨシ焼き後100日あたりでは草丈が約2.1mに達した.一方,ヒバリの個体数は,草丈が約60cmに成長するヨシ焼き後40日でピークとなり,その後急速に減少し,ヒバリの個体数と高茎植物の草丈とのあいだには,有意な負の相関が得られた.また,草丈の高い2か所の調査地では,ヒバリの個体数はヨシ焼きを実施した年のほうがヨシ焼きを中止した年より有意に多かった.さらに,ヨシ焼きを実施した年におけるヨシ焼き前後の調査では,草丈の低い調査地ではヒバリの個体数に差がなかったが,草丈の高い調査地2か所のうち1か所ではヨシ焼き後のほうが有意に多かった.これらのことから,渡良瀬遊水地では,ヒバリはヨシ焼きによって古いヨシやオギが焼失することで広大な繁殖環境を得ていることが示唆された.もし,2011年の繁殖期のようにヨシ焼きが中止されると,ヒバリは道脇や堤防,ヨシ刈り地など極めて限られた場所で繁殖しなければならなくなると考えられた.
キーワード: 繁殖環境,ヒバリ,ヨシ原,ヨシ焼き,渡良瀬遊水地
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日本におけるスズメ個体数の減少要因の解明:
近年建てられた住宅地におけるスズメの巣の密度の低さ
三上 修1・三上かつら2・松井晋3・森本 元3,4・上田恵介3
1. 岩手医科大学・共通教育センター・生物学科
2. バードリサーチ
3.立教大学・理学部・生命理学科
4.公益財団法人 山階鳥類研究所
近年,日本国内においてスズメ Passer montanus の個体数が減少傾向にあると言われている.この要因として,住宅構造の変化がしばしば挙げられる.具体的には,スズメは住宅など人工物にある隙間に営巣するが,近年になって建てられた住宅は,気密性が高いので,スズメが巣をつくれず,それによってスズメの減少が引き起こされたのではないかというものである.このことは可能性としてはあげられてきたが,実際にそのような影響が本当にあるのか,あるとしてどれくらい影響なのかは,わかっていない.そこで,これらを明らかにするために,岩手県と埼玉県において,1970年代から2000年代のあいだに異なる時期に宅地化された住宅地それぞれのスズメの巣の密度を調べ,比較した.その結果,巣の密度は,岩手県の調査地では,1970年頃にできた古い住宅地は2000年頃にできた新しい住宅地の3.8倍高く,埼玉県の調査地でも,古い住宅地は新しい住宅地の4.8倍高かった.このことから,住宅が新しくなったことで,スズメが巣を作れなくなり,スズメの減少をもたらした可能性は大きいと考えられる.ただし,住宅が新しくなることによりスズメが営巣しづらくなる詳細なしくみは,岩手県の調査地と埼玉県の調査地のあいだで,異なっていた.今後より広い範囲での調査が必要である.
キーワード: 営巣地の不足,減少要因,スズメ,住宅地の新旧,建物の構造
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採食環境が競合するアオサギとダイサギにおける餌生物および獲得食物量の比較
濱尾章二1・秋葉 亮2・棗田孝晴2,3
1. 国立科学博物館動物研究部
2. 千葉科学大学危機管理学部
3. 現所属:茨城大学教育学部
採食環境が重複するアオサギ Ardea cinerea とダイサギ A. alba について,千葉県の水田で採食行動を観察した.両種はいずれもタニシとドジョウを主に採食しており,競争関係にあると考えられた.採食試行や採食成功の頻度はダイサギがアオサギを上回っていたが,採食した生物量はアオサギの方が多い傾向がみられた.これはダイサギが小さなタニシを採食する割合が高いことから生じていると考えられた.ダイサギは歩きながら頻繁に小さな餌生物を採食し,アオサギは待ち伏せをして少ない機会に大きな餌生物を採食することによって食物をめぐる競争を緩和していると考えられた.
キーワード: アオサギ,餌生物,競争,ダイサギ,ニッチ,採食,食物量
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インターバル撮影によるアリスイの給餌活動記録
三上 修1・三上かつら2
1. NPO法人 おおせっからんど
2. バードリサーチ
青森県弘前市にて2012年6月から7月にかけて1つがいのアリスイ Jynx torquilla が繁殖した.孵化から巣立ちまでの巣の様子をカメラのインターバルタイマー機能で撮影した.一眼レフカメラに300mmレンズを装着し,15秒に1回のタイムラプスで1日あたり約10時間の撮影を行なった.照度不足と風による振動は撮影成功率を低下させた.6月22日に孵化直後のアリスイのヒナ2羽がみられ,7月13日に1羽が巣立った.育雛期後半は餌を咥えていた写真の枚数はピーク時よりも減ったが,コムクドリに対する警戒と思われる入り口から外を警戒している写真が増えた.餌ははじめアリの繭だったが,途中からアリの成虫や卵も加わった.1回に運んでくる餌量は途中で横ばいになった.
キーワード: アリスイ,青森県,営巣,インターバル撮影,アリ,餌量
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東京湾奧部にあるカワウの休息地での羽数の変化
福田道雄
東京都葛西臨海水族園飼育展示課
1996年 3月から2012年 6月までのあいだ,東京湾内の葛西臨海公園の人工なぎさで休息するカワウ Phalacrocorax carbo の羽数を調べた.カワウの羽数は2月から3月に急減し,6月から9月に急増していた.本調査地の周囲でのコロニーを利用しているカワウは冬期は内陸で採食するものが多く,夏期は海で採食するものが多いと考えられることから,休息地を利用する数にこのような季節変化が見られたものと考えられた.2004年7月以降羽数が次第に減少していたが,近隣コロニーの生息数は減少していなかった.これは,採食地や餌資源量が変化したことを示唆していた.朝,正午,夕方に行なった調査のうち,最多羽数が記録されたのは正午の調査であることが多かった.休息地の近隣のコロニーは立ち入り禁止地にあったので,攪乱はほとんどなく,帰還時間の制約がなかった.そのため,休息していたカワウは夕方をまたずににコロニー戻ることができるため,正午が多かったものと考えられた.
キーワード: カワウ,休息地,東京湾,人工なぎさ
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北海道北西部におけるオオセグロカモメが繁殖する海岸沿いの屋根の特徴と巣の位置
長谷部 真
北海道海鳥センター
北海道北部の日本海側に位置する羽幌港・苫前港で2011年と2012年の6月にオオセグロカモメ Larus schistisagus が繁殖する屋根の特徴や巣の位置を調査した.2011年に 23巣,2012年に27巣が発見された.オオセグロカモメは屋根の特徴として,巣やヒナが落下しにくい平らな屋根や傾斜した雪止めのある屋根を好んだ.巣の位置として見通しがよく,すぐに飛び立てる屋根の縁を好み,2年とも同じ屋根の同じ位置に巣をつくった割合が59%あった.今後増大する可能性のある人間との軋轢に備えて,屋根の上における繁殖成績を明らかにし,天売島などの自然の繁殖地と比較することにより,繁殖地としての海岸沿いの屋根の質を評価することが必用である.
キーワード: オオセグロカモメ,屋根での繁殖,巣の位置
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シジュウカラはツミの生息地で警戒心が高くなる
植田睦之
バードリサーチ
シジュウカラは主要な捕食者であるツミが繁殖してる林では,飛行形態がツミと似ているキジバトに対して,警戒声を発する頻度がツミの繁殖していない林と比べて高かった.シジュウカラはツミの繁殖している危険度の高い場所では警戒度合を高めていて,キジバトに対しても反応することで,捕食のリスクを低めており,危険度の低い場所では,警戒度合を下げることで警戒のコストを下げておいるのだと考えられた。
キーワード: 危険度,警戒,シジュウカラ,捕食者
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大きな声で鳴く沢のミソサザイと小さな複雑な声で鳴く山のミソサザイ
〜 ミソサザイのさえずりへの騒音の影響 〜
植田睦之
バードリサーチ
ミソサザイのさえずりに騒音が与える影響を明らかにするために,沢音の影響のある沢沿いの生息地と無い山の生息地のあいだでさえずりの最大音圧,周波数変調の程度,高さ(最低周波数および最高周波数)と周波数の幅を比較した。2011年に新潟県佐渡,埼玉県秩父,山梨県青木ヶ原,静岡県須走,岐阜県濁河,高知県市の又でミソサザイの声を収集した結果,ミソサザイの声は青木ヶ原を除き,山の生息地の方が沢の生息地よりも小さかった。青木ヶ原はエゾハルゼミが多く,その声が沢音と同様にミソサザイに影響することが考えられる。これらの結果は騒音の中で声を遠くに届かせるために,ミソサザイは大きな声でさえずっていることを示唆している。また,1秒あたりの周波数変調の程度およびノートあたりの周波数変調の程度は,青木ヶ原を除く山の調査地で多かった。さえずりの最低周波数は,都市の騒音で多くの研究と同様に,騒音のある沢の生息地で有意に高くなっていた。
キーワード: さえずり,周波数変調,騒音,ミソサザイ
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