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スズメはなぜ減少しているのか?:都市部における幼鳥個体数の少なさからの考察
三上 修
日本学術振興会,立教大学・理学部・生命理学科. 〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
近年,日本においてスズメ Passer montanus の個体数が減少している可能性が指摘されている.その減少要因について,いくつかの仮説が提示されているが,何が原因かわかっていないのが現状である.減少原因のひとつとして都市環境において,スズメの繁殖がうまくいっていないことが考えられる.そこで,都市部と農村部において,「幼鳥の比率」および,「ひとつがいが面倒をみている巣立ちヒナ数」を比較した.その結果,どちらの値も都市部において低く,予測した通り,スズメの繁殖は,都市部においてうまくいっていないことが示唆された.さらに,後者の値は,都市部において
1羽程度と少なく,都市部では,スズメの増殖率がマイナスになっている可能性も考えられた.したがって,都市での繁殖の不振が,スズメの個体数の減少の一要因になっているのかもしれない.
キーワード: 減少要因,スズメ,都市,農村,普通種
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気象レーダー「ウィンドプロファイラ」により明らかになった
全国的な渡り鳥の移動状況
植田睦之1 ・島田泰夫2・有澤雄三3・樋口広芳4
1. バードリサーチ. 〒183-0034 東京都府中市住吉町1-29-9
2. 日本気象協会. 〒170-6055 東京都豊島区東池袋3-1-1 54F
3. 気象情報通信. 〒170-6054 東京都豊島区東池袋3-1-1 54F
4. 東京大学・生物多様性科学研. 〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1
ウィンドプロファイラという風を観測するためのレーダーに渡り鳥を中心とした鳥からのエコーが映る.そのエコーの出現状況を解析し,全国的な渡り鳥の状況について記載した.全国31か所にレーダーが設置されているが,いずれの地点でも
4月から 6月にかけての春期と 8月から11月にかけての秋期の夜間に「鳥エコー」が多く記録された.またその時期は地域によって異なっており,北の地域は南の地域と比べて春は遅く,秋は早かった.渡りは日没
1〜3時間程度後から活発になる日が多く,夜半過ぎからは徐々に少なくなった.春の渡りは秋に比べて,日没後に渡りが活発になるまでの時間が短く,秋の渡りでは季節の進行にしたがって,早くから渡りが活発になる傾向があった.地域的にみると,春の渡りは日本海側で多く,秋は太平洋側も多いという違いがあった.国外では,レーダーをもちいた渡り鳥の生息状況のモニタリングが行なわれているが,日本でもこのウィンドプロファイラを使うことでそれが可能になると考えられ,標識調査等の情報と合わせることでより意味のあるものにできると思われる.
キーワード: ウィンドプロファイラ,気象状況,季節変化,モニタリング,渡り鳥
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關 義和 帝京科学大学アニマルサイエンス学科.〒409-0193 山梨県上野原市八ツ沢2525
*現所属 : 東京農工大学大学院連合農学研究科.〒183-8509 東京都府中市幸町3-5-8
カルガモの季節移動について調べるために,山梨県の大野調整池とその近隣河川において,年間を通してカルガモの個体数調査を行なった.調整池では,5月から
9月までの繁殖期にはカルガモは観察されたが,10月から翌年 4月までの越冬期にはほとんど観察されなかった.一方,河川では,カルガモの個体数は増減をくり返していたが,調整池ほどの越冬期の個体数の顕著な減少はみられなかった.調整池では,マガモやその他の越冬カモ類が多数観察されたが,河川ではほとんど観察されなかった.先行研究によりカルガモとマガモのあいだには著しい社会的干渉があることが報告されている.したがって,カルガモの越冬期の分布を決める要因として,その他のカモ類,とくにマガモなどの飛来個体数が関与している可能性が考えられる.
キーワード: カルガモ,季節移動,個体数変動
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嶋田哲郎 ・藤本泰文
宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団. 〒989-5504 宮城県栗原市若柳字上畑岡敷味17-2
2009年5月1日に内沼で捕獲されたオオクチバス(全長506mm,体重2.4kgのメス)の胃内容物から鳥類1羽,アメリカザリガニ3匹が発見された.未消化の羽毛の大きさや色彩パターン,上嘴や脚の色や形態,露出嘴峰長やふ蹠長などから,捕食された鳥類はオオジュリンと考えられた.
キーワード: 伊豆沼・内沼,オオクチバス,オオジュリン,捕食
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冬期の越後平野における水田構造からみたコハクチョウの採食環境
渡辺朝一
〒310-0032 茨城県水戸市元山町 2-2-33-202
越冬期前半の2004年12月11日と,越冬期の後半の2005年 2月26日に,越後平野水田において,コハクチョウが水田面と畦畔をどのように利用しているかを調査した.その結果,コハクチョウは採食地として,越冬期の前半も後半も水田面を選好している可能性が示された.
キーワード: コハクチョウ,微環境選択,採食環境,水田面,畦畔
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長距離移動するマガンの飛び立ち地点からの距離と飛行高度との関係
植田睦之1・嶋田哲郎2
1. バードリサーチ. 〒183-0034 東京都府中市住吉町1-29-9
2. 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団. 〒989-5504 宮城県栗原市若柳字上畑岡敷味17-2
マガンの渡り中継地周辺における風力発電施設でのバードストライクの危険な範囲を推定するために,マガンの飛び立ち地点からの距離と飛行高度の関係について調査を行なった.マガンが北帰行する時期にあたる2009年2月に6日間,宮城県伊豆沼および蕪栗沼で調査を行なった結果,長距離移動するマガンは飛び立ち地点から3km程度で飛行高度が一般的な風車の高さである100mより高くなり,安全を見込むと飛び立ち地点から4〜5km程度でバードストライクの危険性が低くなると考えられた.
キーワード: バードストライク,飛行高度,風力発電,マガン
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森林におけるスポットセンサスとラインセンサスによる鳥の記録率の比較
平野敏明1・植田睦之1・今森達也2・川崎慎二3・内田博4・加藤和明5・金井裕5
1. バードリサーチ. 〒183-0034 東京都府中市住吉町1-29-9
2. 北陸鳥類調査研究所. 〒923-0918 石川県小松市京町11
3. 〒309-1453 茨城県桜川市友部240-1-102
4. 〒355-0017 埼玉県東松山市松葉町4-2-14
5. 日本野鳥の会. 〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23
鳥類の生息状況のモニタリングにおけるスポットセンサスの有効性を検討するために,越冬期と繁殖期に各13か所の森林で,ラインセンサスとスポットセンサスによる,鳥の種数・個体数の把握状況の比較を行なった.その結果,越冬期・繁殖期ともにスポットセンサスは,ラインセンサスより多くの種を記録し,しかも記録率も短時間で高くなった.記録された個体数は,越冬期・繁殖期ともにスポットセンサスとラインセンサスのあいだに正の相関がみられたが,越冬期は両手法で記録された個体数の差が大きかった.繁殖期のスポットセンサスの各定点の最大値の合計値とラインセンサスの最大値は極めて近い値をとり,個体数のおおまかな比較も可能と考えられた.以上の結果から,鳥類の生息状況のモニタリング調査のために,スポットセンサスは効率的な方法と考えられた.
キーワード: 森林,スポットセンサス,調査方法,モニタリング,ラインセンサス
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高木憲太郎1・佐藤達夫2
1. バードリサーチ. 〒183-0034 東京都府中市住吉町1-29-9
2. 行徳野鳥観察舎. 〒272-0137 千葉県市川市福栄4-22-11
鳥類の移動を追跡する方法として,発信機などを背中に背負わせて,その位置を追跡する方法がある.カワウに衛星追跡用の送信機をハーネスによって装着した場合,翼膜がハーネスと擦れて傷になることがある.テサテープにより背中の羽根へ接着することによる送信機の装着であれば,この問題は起きないが,目的の調査期間外れない耐久性があるかどうかはまだわかっていない.そこで,ダミーの送信機をもちいて,この装着方法の耐久性を試験した.半飼育下のカワウ
6羽と,餌付いていた野生のカワウ 4羽に送信機模型を装着し,その装着状態を不定期に観察して脱落までの日数を調査した.その結果,10羽中7羽について10日以下の記録誤差で結果が得られ,最長でも81日であった.したがって,この装着方法では,衛星追跡調査に必要な
3か月から 1年という持続期間を得ることはできなかった.頻度分布を見てみると,30日未満と60日以上の 2山に分かれた.この結果には何らかの個体差が影響したことが考えられるが,原因は明らかにできなかった.換羽期直前の
5,6月に装着した半飼育下の 3羽のうち 2羽で,5日未満という短期で脱落しており,野生個体で換羽期を避けて装着を行なえば装着持続期間を延長できる可能性が示唆された.
キーワード: 衛星追跡,カワウ,装着方法,接着,テープ
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草原の鳥類のモニタリングにおけるスポットセンサス法の有効性
―ラインセンサス法との鳥の記録率の比較―
植田睦之1・平野敏明1・川崎慎二2・黒沢令子1・村濱史郎3・青木則幸4・今森達也5・福田佳弘6・馬田勝義7・金井裕8
1. バードリサーチ
3. 野生生物保全研究所
5. 北陸鳥類調査研究所
6. 知床海鳥研究会
8. 日本野鳥の会自然保護室
鳥類の生息状況のモニタリングにおけるスポットセンサスの有効性を検討するために,越冬期と繁殖期に各10か所の草原で,ラインセンサスとスポットセンサスによる,鳥の種数・個体数の把握状況の比較を行なった.その結果,有意な違いはないものの,越冬期・繁殖期ともにスポットセンサスの方がラインセンサスよりも記録率が高かった.記録された個体数は,越冬期・繁殖期ともにスポットセンサスとラインセンサスのあいだには有意な正の相関がみられた.スポットセンサスあるいはラインセンサスのみで記録された種の特性を見ると,草原性や草原/灌木性の種をスポットセンサスでしか記録できなかった例が多かった。以上の結果から,草原環境での鳥類の生息状況のモニタリングにおいてスポットセンサスはラインセンサスと同程度に,あるいはより効率的な方法と考えられた.
キーワード: スポットセンサス,草原,調査方法,モニタリング,ラインセンサス
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