団体概要 > 2022年度バードリサーチ活動報告

2022年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてガビチョウやイワヒバリ等の調査をすすめています。

鳥類相のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギ・チドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチによるモニタリングを継続した。各地で行なわれている観察記録もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」によるデータ収集も行ない,それを普及推進するために以下に報告するインターネット・バードソンを開催した。
  • インターネット・バードソン
    委託主 自主事業
    目的 野鳥データベース「フィールドノート」の普及と、野鳥観察データの収集強化
    内容と成果 野鳥DB普及行事として1月・5月に2週間で開催。1月は361名参加、3,293カ所で4,314回の観察。5月は307名が参加、2,546カ所で3,616回の観察があった。
  • 全国鳥類繁殖・越冬分布調査
    委託主 自主事業
    目的 全国の鳥類の分布変化を明らかにするために調査を実施する
    内容と成果 繁殖分布調査に続き,越冬分布のとりまとめを行ない,2023年2月に報告冊子を発行した。アジア各国の参考にもなるように,英語版もPDFで発行した。繁殖分布調査については,成果の活用を進め,狩猟鳥獣の改定に使われ,また,レッドリストの改訂にも使われている。成果の論文化も進めている。ホームページ
  • 高山帯鳥類調査
    委託主 自主事業
    目的 モニタリングが十分行われていない高山帯の鳥類を調査する。
    内容と成果 株式会社モンベルからの支援を受けて,登山者へも呼びかけ,高山の鳥の調査を実施している。昨年度はイワヒバリの目撃情報の収集を行い、会員や登山者から98件の目撃情報が寄せられた。今年度は、目撃情報をもとにイワヒバリの生息しそうな山を抽出し、現地調査により生息の有無の確認を会員参加で実施する。

種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているシロチドリ,ヒクイナ,ヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイ,セグロカッコウ,年変動の大きい特定の冬鳥等の生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 セグロカッコウはこれまで西日本の記録中心だったが,中部地方や関東地方での長期滞在記録が毎年記録される地点,東北や北海道での記録が増えはじめていることなど明らかになってきた。サンショウクイの情報も継続的に届いており,分布変化の大きい鳥への関心が伺えた。

生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,カッコウ類やシギ・チドリなどの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。ウグイスとツバメの初認予報も継続した。情報入力をスマホからもしやすくなるよう,入力環境の整備も進めた。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。巣箱調査では,暖かい年に繁殖成績が悪い年があることがわかり,その失敗原因を明らかにするために巣箱カメラの試行も行なった。

その他

  • 鳥類の食性データの収集
    委託主 独自事業
    目的 鳥類の食性に関する情報収集
    内容と成果 基礎的な情報が不足している鳥類の食性について情報を収集し、蓄積する。2022年1月に開始し、これまでに1500件以上の記録が寄せられている。イソヒヨドリやジョウビタキなどの越冬期の食性、ダイサギの河川利用などいくつかのテーマで記録をまとめ、発信した。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウとコブハクチョウを,希少種として猛禽類を,身近な鳥としてツバメをモデルケースとして事業を実施しています。

保護管理推進事業

  • カワウの広域保護管理の推進
    委託主 環境省,関東地方環境事務所,中部地方環境事務所,関西広域連合
    目的 カワウの広域的かつ計画的な管理を推進する
    内容と成果 関東カワウ広域協議会の情報取りまとめや,中部近畿カワウ広域協議会の運営や情報共有を支援し,関西広域連合域におけるカワウの生息状況や被害状況の調査を実施し,委員や講師として全国の都道府県のカワウの管理を指導し,個体群管理の推進について専門家を集めた検討を行ったほか,都道府県や市町村の行政担当者向けにカワウの管理の基礎と応用に関するオンライン研修会の開催を行った。
  • 千葉県コブハクチョウ調査
    委託主 千葉県
    目的 一部地域で増加しつつあり,農業被害も出始めているコブハクチョウの管理を推進する
    内容と成果 手賀沼を中心に千葉県北部に生息しているコブハクチョウの現状を把握するため、5月に手賀沼、印旛沼、将監川、根木名川、利根川を調査したところ、122羽が確認された。そのほとんどが下手賀沼の一部に生息していた(69羽)。2019年から2021年までは全体的に個体数が増加傾向であったが、2022年、2023年と続いて手賀沼周辺の個体数は減少していた。減少の原因は明らかでない。手賀沼以外の場所では個体数が緩やかに増加している。その他、精管結紮による避妊手術を実施したが成功せず、病理解剖による原因解明を行っている。

その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 独自事業
    目的 ツバメの調査と保護を行い、その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 (株)シーアイシーのスポンサーでツバメのフン受け1200枚を道の駅・鉄道の駅、その他施設に無償配布。松屋銀座などに人工巣の設置を行った。クラウドファンディングを実施して、1,047,242円が集まった。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 30か所の調査地で10月から翌年3月までの間,月2回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の30か所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。
  • オオタカモニタリング調査                  
    委託主 独自事業
    目的 希少種解除後のオオタカの状況を監視
    内容と成果 環境省によるオオタカのモニタリングが終了し,解除後の影響は明確ではないが,オオタカが減少傾向にあることが示され,その成果を論文にとりまとめた。日本オオタカネットワークなどと協力してモニタリングを継続した。
  • フィリピンの夏鳥越冬地を守る森林コーヒーの支援
    委託主 独自事業
    目的 フィリピン山岳地帯の森林農法コーヒー園で野鳥が生息できる環境管理を行い、農家を支援するため日本でのコーヒーの販路を広げる。
    内容と成果 前年度に実施した現地での野鳥の鳴き声のICレコーダー調査の録音を分析した。新しいプロジェクトサイトについてフィリピンで下見を行い、調査のための助成金を申請中。
  • ハマシギの保全に関するマニュアル作成
    委託主 環境省
    目的 ハマシギの保全に資するマニュアル作成
    内容と成果 日本の干潟に生息する典型的なシギ類のハマシギの保全を扱うことにより、その他のシギ・チドリ類や干潟の保全を推進する。内容は、ハマシギの生態、現状の問題点、モニタリング、調査研究、普及啓発、保全等について分担執筆する。

自然環境の改善の立案提言事業

今年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,さまざまな調査の研修会も実施しました。

  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが15件集まり,この中から9件の支援先プランを選定し,これにバードリサーチからの1件を追加して10件を支援対象とした。支援対象とした調査研究プランをもとに寄付を募ったところ,738票の投票と2,222,000円の寄付が得られた。この寄付を得票数に応じて支援先に配分し贈呈した。
  • みにクル
    宇都宮中央公園において,毎週土曜日に実施し,調査を体験してもらった。シギ・チドリ類調査は2023春期から一部で実施した。TORI-quizなどを拡充して,ホームページコンテンツを整理した。
  • 鳥類学大会
    会員やバードウォッチャーの発表機会の創出と鳥類の調査や研究に関わる人の交流の場の創出のため鳥類学大会を1月にオンラインで開催し、560名の参加が得られ、口頭発表23題、ポスター発表40題の発表に加え、3件の自由集会が開かれた。投票型の発表賞を設けた。
  • ホームページ等の更新
    バードリサーチの活動を広報するため,ホームページ,ブログ,Facebookページを随時更新した。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを随時発行した.水鳥通信を1回発行した。
  • 研究誌の発行
    2本の論文を掲載した第18巻を2022年12月に発行した.また第19巻の論文は8本掲載し,4本の投稿を受け付けている。
  • 年報の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,年報を発行した.


貸借対照表

NPO法人 バードリサーチ

2023年6月30日 現在 (単位:円)

資産の部
【流動資産】
163,951,969
 現金預金
161,329,103
 
 未収入金 1,687,500
 前払費用
935,366
 
【固定資産】
2,961,081
 船舶レーダー
1
 
 エアコン 226,001   
 パーテーション 205,040   
 敷金 633,600   
 ソフトウェア 1,896,439
資産合計   166,913,050
負債の部
【流動負債】    
 未払金
0
 
 未払い消費税 1,962,300  
 預り金
1,304,389
 
 前受け金
14,667,941
 
負債合計  
17,934,630
正味財産の部
前期繰越正味財産 139,950,665  
当期正味財産増減額
9,027,755
 
正味財産合計
148,978,420
 
負債および正味財産合計
166,913,050
 



損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2022年7月1日   至 2023年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
2,543,000
 
寄付金収入
4,016,010
 
基礎情報の収集解析事業
39,144,938
 
保全施策の立案提言事業
36,532,665
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業ほか 1,192,307   
民間助成金 5,899,000
その他 1,427  
収入合計   89,327,920
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
11,562,105
 
 保全施策の立案提言事業
22,793,732
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
2,912,525
 
 人件費
31,436,023
 
【管理費】    
 人件費
1,779,581
 
 その他経費
8,321,226
 
支出合計  
78,805,192
法人税等  
1,496,400
当期収支  
9,027,755
前期繰越損益  
139,950,665
次期繰越損益  
148,978,420



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2022年7月1日   至 2023年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 2,543,000
 寄付金収入(一般) 1,648,010
 寄付金収入(つばめ) 149,000
 寄付金収入(研究支援) 2,219,000
 助成金収入 5,899,000
 雑収入 0
支出
 
 普及啓発事業1,092,728
 研究支援プロジェクト 2,287,255
 つばめ 155,101
 フィリピンコーヒー 596,675
 アジアモニタリング 4,398,003
 越冬分布調査 627,093
 その他 124,381
 一般管理費等 1,924,058
当期収支 1,252,716