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2021年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてガビチョウやホシガラス等の調査をすすめています。

鳥類相のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギ・チドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチによるモニタリングを継続した。各地で行なわれている観察記録もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」によるデータ収集も行ない,それを普及推進するために以下に報告するインターネット・バードソンを開催した。
  • インターネット・バードソン
    委託主 自主事業
    目的 野鳥データベース「フィールドノート」の普及と、野鳥観察データの収集強化
    内容と成果 野鳥DB普及行事として1月・5月に2週間で開催。1月は328名参加、3,185カ所で1,123回の観察。5月は285名が参加、3,727カ所で3,672回の観察があった。観察地点数・回数は増えているが、参加人数は200人台後半で伸び悩んでいる。
  • 全国鳥類繁殖分布調査
    委託主 自主事業
    目的 全国の鳥類の分布変化を明らかにするために調査を実施する
    内容と成果 日本野鳥の会,自然保護協会,標識協会,山階,多様性センターなどと合同で調査を開始し,全国鳥類繁殖分布調査の最終報告書を作成した。ニュースリリースをしたことでマスコミ等で注目され,テレビ1件,ラジオ4件,新聞33件,雑誌7件で取り上げられた。また,越冬分布調査のための情報収集も進めており,2022年度に最終報告をまとめる予定である。ホームページ
  • 高山帯鳥類調査
    委託主 自主事業
    目的 モニタリングが十分行われていない高山帯の鳥類を調査する。
    内容と成果 株式会社モンベルからの支援を受けて,登山者へも呼びかけ,高山の鳥の調査を実施している。昨年度は一昨年度に引き続き、感染症の流行状況を踏まえ,イワヒバリの調査開始を延期した。代わりに登山記録サイトの写真情報の収集を行った。2022年度に登山者から情報を収集する調査を開始し,合わせて現地調査による生息密度の把握方法の検討を行う予定である。

種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているシロチドリ,ヒクイナ,ヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイ,セグロカッコウ,年変動の大きい特定の冬鳥等の生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 セグロカッコウはこれまで西日本の記録中心だったが,中部地方や関東地方での長期滞在記録が毎年記録される地点,東北や北海道での記録が増えはじめていることなど明らかになってきた。

生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,カッコウ類やシギ・チドリなどの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。共同研究で気象との関係の解析を進め,それをもとにしたウグイスとツバメの初認予報を出した。アジアでのモニタリングに向けた試行も継続した。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2022年は林道崩落で2年間実施できていなかった巣箱のロガー調査を再開でき,ICレコーダのデータ解析を行ない,夏鳥や漂鳥のさえずり時期がさえずりだす直前の気温の影響を受けていそうなことが示された。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類を,身近な鳥としてツバメをモデルケースとして事業を実施しています。

保護管理推進事業

  • カワウの広域保護管理の推進
    委託主 環境省,中部地方環境事務所,関西広域連合
    目的 カワウの広域的かつ計画的な管理を推進する
    内容と成果 関東カワウ広域協議会の情報取りまとめや,中部近畿カワウ広域協議会の運営や情報共有を支援し,関西広域連合域におけるカワウの生息状況や被害状況の調査を実施し,委員や講師として全国の都道府県のカワウの管理を指導し,個体群管理の推進について専門家を集めた検討を行ったほか,都道府県や市町村の行政担当者向けにカワウの管理の基礎と応用に関するオンライン研修会の開催を行った。
  • 千葉県コブハクチョウ調査
    委託主 千葉県
    目的 一部地域で増加しつつあり,農業被害も出始めているコブハクチョウの管理を推進する
    内容と成果 手賀沼を中心に千葉県で増加しているコブハクチョウの現状を把握するため、5月に手賀沼、印旛沼、将監川、根木名川、利根川を調査したところ、126羽が確認された。そのほとんどが下手賀沼の一部(96羽)に生息していた。2019年から2021年までは全体的に個体数が増加傾向であったが、今回の調査では昨年と比べて約70羽減少していた。減少の原因は明らかでない。その他、精管結紮による避妊手術の試行を行っており、技術が確立されたら多くの個体について手術を行う体制を確立させたい。

その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 独自事業
    目的 ツバメの調査と保護を行い、その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 (株)シーアイシーのスポンサーでツバメのフン受け1200枚を道の駅・鉄道の駅、その他施設に無償配布。今年はクラウドファンディングを実施して、322,500円が集まった。愛鳥週間に朝日新聞で報道された。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 30か所の調査地で10月から翌年3月までの間,月2回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の30か所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。
  • オオタカモニタリング調査
    委託主 環境省・独自事業
    目的 希少種解除後のオオタカの状況を監視
    内容と成果 環境省によるオオタカのモニタリングが終了し,解除後の影響は明確ではないが,オオタカが減少傾向にあることが示された。今後は,日本オオタカネットワークなどと協力してモニタリングを継続していくこととなった。
  • フィリピンの夏鳥越冬地を守る森林コーヒーの支援
    委託主 独自事業
    目的 フィリピン山岳地帯の森林農法コーヒー園で野鳥が生息できる環境管理を行い、農家を支援するため日本でのコーヒーの販路を広げる。
    内容と成果 コロナ渦で現地を訪問できないため、コーヒー農園と残存森林でICレコーダによる録音調査を実施。 農園によって種数の多寡がある要因や、野鳥を増やすための食性管理について検討した。

自然環境の改善の立案提言事業

今年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,さまざまな調査の研修会も実施しました。

  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが12件集まり,審査によってこの中から9件の支援先プランを選定し,これにバードリサーチからの1件を追加して10件を支援対象とした。このリストをもとに寄付を募り,675票の投票と2,031,326円の寄付が得られた。この寄付を得票数に応じて支援先に配分し贈呈した。
  • みにクル
    宇都宮中央公園において,コロナによる休止はしつつも,毎週土曜日に実施し,調査を体験してもらった。これまで実施してきたシギ・チドリ類調査はコロナの影響もあり実施しなかった。TORI-quizなどを拡充して,ホームページコンテンツを整理した。
  • 鳥類学大会
    会員やバードウォッチャーの発表機会の創出と鳥類の調査や研究に関わる人の交流の場の創出のため鳥類学大会を12月にオンラインで開催し、481名の参加が得られ、46題の発表が集まった。併せて、バードリサーチ賞の授賞式・受賞講演を行った。
  • ホームページ等の更新
    バードリサーチの活動を広報するため,ホームページ,ブログ,Facebookページを随時更新した。アクセス数はやや増加していた。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを随時発行した.水鳥通信を1回発行した。
  • 研究誌の発行
    11本の論文を掲載した第17巻を2021年12月に発行した.また第18巻の論文は6本掲載し,4本の投稿を受け付けている。。
  • 年報の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,年報を発行した.


貸借対照表

NPO法人 バードリサーチ

2022年6月30日 現在 (単位:円)

資産の部
【流動資産】
158,924,721
 現金預金
156,317,435
 
 未収入金 659,500
 前払費用
1,947,786
 
【固定資産】
2,996,585
 船舶レーダー
1
 
 エアコン 338,831   
 パーテーション 332,608   
 敷金 633,600   
 ソフトウェア 1,701,545
資産合計   161,921,306
負債の部
【流動負債】    
 未払金
1,078,770
 
 未払い消費税 2,058,500  
 預り金
1,073,764
 
 前受け金
17,759,607
 
負債合計  
21,970,641
正味財産の部
前期繰越正味財産 127,906,510  
当期正味財産増減額
12,044,155
 
正味財産合計
139,950,665
 
負債および正味財産合計
161,921,306
 



損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2021年7月1日   至 2022年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
2,439,000
 
寄付金収入
3,298,459
 
基礎情報の収集解析事業
33,397,730
 
保全施策の立案提言事業
42,447,440
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業ほか 2,616,305   
民間助成金 1,382,958
その他 1,344  
収入合計   85,583,236
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
11,394,227
 
 保全施策の立案提言事業
20,222,242
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
2,126,529
 
 人件費
29,069,167
 
【管理費】    
 人件費
2,274,377
 
 その他経費
7,702,339
 
支出合計  
72,788,881
法人税等  
750,200
当期収支  
12,044,155
前期繰越損益  
127,906,510
次期繰越損益  
139,950,665



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2021年7月1日   至 2022年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 2,439,000
 寄付金収入(一般) 1,106,533
 寄付金収入(つばめ) 157,600
 寄付金収入(研究支援) 2,034,326
 助成金収入 1,382,958
 雑収入 0
支出
 
 普及啓発事業966,074
 研究支援プロジェクト 2,086,359
 つばめ 165,293
 繁殖分布調査 1,122,166
 その他 62,247
 一般管理費等 2,380,749
当期収支 337,529