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2020年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてガビチョウやホシガラス等の調査をすすめています。

鳥類相のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギ・チドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチによるモニタリングを継続した。各地で行なわれている観察記録もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」によるデータ収集も行ない,それを普及推進するために以下に報告するインターネット・バードソンを開催した。
  • インターネット・バードソン
    委託主 自主事業
    目的 野鳥データベース「フィールドノート」の普及と、野鳥観察データの収集強化
    内容と成果 野鳥DB普及行事として1月・5月に2週間で開催。1月は285名参加、2,308カ所で3,323回の観察。5月は264名が参加、2,364カ所で3,445回の観察があった。5月大会は観察地点・回数が過去最高になったが、参加人数は200人台後半から伸び悩んでいる。
  • 全国鳥類繁殖分布調査
    委託主 自主事業
    目的 全国の鳥類の分布変化を明らかにするために調査を実施する。
    内容と成果 日本野鳥の会,自然保護協会,標識協会,山階,多様性センターなどと合同で調査を開始し,全国鳥類繁殖分布調査の最終年調査およびそれで完了できなかった調査地の補足調査を実施した。実施が困難で実施を見送った無人島を除き,全コースの調査が完了した。ホームページ
  • 高山帯鳥類調査
    委託主 自主事業
    目的 モニタリングが十分行われていない高山帯の鳥類を調査する。
    内容と成果 株式会社モンベルとの共同事業として,登山者へも呼びかけ,高山の鳥の調査を実施している。昨年度はホシガラスよりも分布が高山帯の岩場に限定されると思われるイワヒバリの調査を開始する予定であったが、感染症の流行状況を踏まえ、登山や県境をまたぐ移動を促すような調査を新しく始めるのに適していない考え、延期した(2021夏の調査開始も延期とした)。イワヒバリの登山記録の投稿サイトからは順調に目撃記録を収集することができており、これまでに3年分の登山記録を調べ、1000件以上の写真にもとづく記録を収集している。

種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているシロチドリ,ヒクイナ,ヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイ,セグロカッコウ,年変動の大きい特定の冬鳥等の生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 セグロカッコウはこれまで西日本の記録中心だったが,中部地方や関東地方での長期滞在記録が毎年記録される地点,東北や北海道での記録が増えはじめていることなど明らかになってきた。

生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,カッコウ類やシギ・チドリなどの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。共同研究で気象との関係の解析を進め,それをもとにしたウグイスのさえずり予報を出した。アジアでのモニタリングに向けた試行も行なった。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2021年は2019,2020年に続き,早春の鳥は早く,それに続く鳥が遅い傾向にあった。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類を,身近な鳥としてツバメをモデルケースとして事業を実施しています。

保護管理推進事業

  • カワウの広域保護管理の推進
    委託主 環境省,中部地方環境事務所,関西広域連合
    目的 カワウの広域的かつ計画的な管理を推進する
    内容と成果 中部近畿カワウ広域協議会の運営や情報共有を支援し,関西広域連合域におけるカワウの生息状況や被害状況の調査を実施し,委員や講師として全国の都道府県のカワウの管理を指導し,個体群管理の推進について専門家を集めた検討を行ったほか,都道府県の行政担当者向けにカワウの管理の基礎と応用に関するオンライン研修会の開催を行った。
  • 千葉県コブハクチョウ調査
    委託主 千葉県
    目的 一部地域で増加しつつあり,農業被害も出始めているコブハクチョウの管理を推進する
    内容と成果 手賀沼を中心に千葉県で増加しているコブハクチョウの現状を把握するため、5月に手賀沼、印旛沼、将監川、根木名川、利根川を調査したところ、202羽が確認された。そのほとんどが下手賀沼の一部(110羽)に生息していた他、香取市周辺で個体数が増加していた。今後の業務では、偽卵交換による個体数抑制効果や、防鳥ネットによる農地への侵入防止効果を検討する。

その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 独自事業
    目的 ツバメの調査と保護を行い、その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 (株)シーアイシーのスポンサーでツバメのフン受け1200枚を道の駅・鉄道の駅、その他施設に無償配布。一般には200枚を無償配布した。みんなの動物園、朝日新聞、ビッグイシュー、Yahooニュース、めんたいワイド(福岡放送)、テレ朝スーパーJチャンネル、日テレすっきりの天気予報、など 多数のマスコミで取り上げられた。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 30か所の調査地で10月から翌年3月までの間,月2回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の30か所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。
  • オオタカモニタリング調査
    委託主 環境省
    目的 希少種解除後のオオタカの状況を監視
    内容と成果 6地域のモニタリングおよびアンケート調査で,オオタカの希少種解除後の状況をモニタリングする体制を構築した。オオタカの繁殖成績が低下している可能性が示された。
  • フィリピンの夏鳥越冬地を守る森林コーヒーの支援
    委託主 独自事業
    目的 フィリピン山岳地帯の森林農法コーヒー園で野鳥が生息できる環境管理を行い、農家を支援するため日本でのコーヒーの販路を広げる。
    内容と成果 コロナ渦で現地を訪問できないため、コーヒー農園と残存森林でICレコーダーによる録音調査を実施。
  • ムクドリのねぐら調査
    委託主 独自事業
    目的 駅前などに形成されるムクドリのねぐらによる被害対策
    内容と成果 2020年10月からムクドリのねぐらの情報収集をはじめ、これまでに122箇所のねぐら情報を得た。この他に、市区町村にもねぐら情報や被害状況のアンケート調査を行った。ムクドリのねぐら被害が起きる季節や、ねぐらとしてケヤキが特に好まれることがわかった。現在は、ムクドリがねぐらとして好む環境の解析を行っている。


自然環境の改善の立案提言事業

今年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,さまざまな調査の研修会も実施しました。

  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが13件集まり,審査によってこの中から9件の支援先プランを選定し,これにバードリサーチからの1件を追加して10件を支援対象とした。このリストをもとに寄付を募り,514票の投票と154万3千円の寄付が得られた。この寄付を得票数に応じて支援先に配分し贈呈した。
  • みにクル
    宇都宮中央公園において,コロナによる休止はしつつも,毎週土曜日に実施し,調査を体験してもらった。これまで実施してきたシギ・チドリ類調査はコロナの影響もあり実施しなかった。TORI-quizなどを拡充して,ホームページコンテンツを整理した。
  • 動画配信・WEB鳥類学大会
    調査結果の報告・告知,学習コンテンツを追加するとともに、鳥学会が開催されないことを受けて発表機会の創出と鳥類の調査や研究に関わる人の交流の場の創出のため鳥類学大会onlineを12月にオンラインで開催し、484名の参加が得られ、口頭発表13題、スライドショー発表15題、自由集会3件、テーマトークセッション13件が行われた。
  • ホームページ等の更新
    バードリサーチの活動を広報するため,ホームページ,ブログ,Facebookページを随時更新した。アクセス数はやや増加していた。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを随時発行した.水鳥通信を1回発行した。ニュースレターは全文無料公開とした。アクセス数は年々大きく増加しており2020年度は16万ちかいアクセスがあった。
  • 研究誌の発行
    7本の論文を掲載した第16巻を2020年12月に発行した.また第17巻の論文は6本掲載し,5本の投稿を受け付けている。
  • 年報の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,年報を発行した.


貸借対照表

NPO法人 バードリサーチ

2021年6月30日 現在 (単位:円)

資産の部
【流動資産】
146,852,197
 現金預金
145,382,038
 
 未収入金 0
 前払費用
1,470,159
 
【固定資産】
2,675,258
 船舶レーダー
1
 
 敷金 536,000   
 ソフトウェア 2,139,257
資産合計   149,527,455
負債の部
【流動負債】    
 未払金
0
 
 未払い消費税
2,119,400
 
 預り金
1,270,227
 
 前受け金
18,231,318
 
負債合計  
21,620,945
正味財産の部
前期繰越正味財産 123,325,895  
当期正味財産増減額
4,580,615
 
正味財産合計
127,906,510
 
負債および正味財産合計
149,527,455
 



損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2020年7月1日   至 2021年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
2,281,000
 
寄付金収入
3,262,867
 
基礎情報の収集解析事業
41,687,874
 
保全施策の立案提言事業
42,788,305
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 688,732   
民間助成金 2,177,646
その他 1,283  
収入合計   92,887,707
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
15,432,887
 
 保全施策の立案提言事業
23,987,180
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
1,060,223
 
 人件費
36,850,871
 
【管理費】    
 人件費
2,655,941
 
 その他経費
7,660,790
 
支出合計  
87,647,892
法人税等  
659,200
当期収支  
4,580,615
前期繰越損益  
123,325,895
次期繰越損益  
127,906,510



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2020年7月1日   至 2021年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 2,281,000
 寄付金収入(一般) 1,229,667
 寄付金収入(つばめ) 490,200
 寄付金収入(研究支援) 1,543,000
 助成金収入 2,177,646
 雑収入 0
支出
 
 普及啓発事業1,060,223
 研究支援プロジェクト 1,590,086
 つばめ 495,246
 繁殖分布調査 1,464,670
 さえずりナビ 1,004,317
 その他 312,562
 一般管理費等 2,786,991
当期収支 -992,582*

*助成金を利用して過年度開発したさえずりナビの開発費の減価償却費が,収入のない今年度の支出として計上されたため,昨年度は235万の黒字だったが,今年度は赤字となった。減価償却は5年にわたるので,来年度以降も同様の赤字が生じる可能性がある。