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2019年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてサンショウクイやホシガラス等の調査をすすめています。

鳥類相のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギ・チドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチによるモニタリングを継続した。各地で行なわれている観察記録もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」によるデータ収集も行ない,それを普及推進するために以下に報告するインターネット・バードソンを開催した。
  • インターネットバードソン
    委託主 自主事業
    目的 野鳥データベース「フィールドノート」の普及と,野鳥観察データの収集強化。
    内容と成果 1月1日〜19日に第2回大会を開催。244名が参加。2347か所で3039回の観察が記録された。5月23日〜6月7日に第3回大会を開催。286名が参加。1928か所で3399回の野鳥観察が記録された。バードソンを機にフィールドノートを利用し始めたユーザーは,その後も利用を続けてくれる傾向にある。
  • 全国鳥類繁殖分布調査
    委託主 自主事業
    目的 全国の鳥類の分布変化を明らかにするために調査を実施する。
    内容と成果 日本野鳥の会,自然保護協会,標識協会,山階,多様性センターなどと合同で調査を開始し,全国鳥類繁殖分布調査の4年目の調査を実施し,最終年の調査を実施中である。現時点で実施が困難な無人島を除き,全コースの調査者が決まって,97%以上の調査地からデータが届いている。コロナの問題もあって,離島の調査ができなかった場所があるなど,来年の補足調査が必要ではあるが,この繁殖期でほぼ調査を完了できる見通しである。ホームページ
  • 高山帯鳥類調査
    委託主 自主事業
    目的 モニタリングが十分行われていない高山帯の鳥類の調査を実施する。
    内容と成果 株式会社モンベルとの共同事業として,登山者へも呼びかけ,ホシガラスの目撃情報は2684件を集めることができ,その成果を鳥学会において発表した。また,ホシガラスよりも生息個体数や分布が限られると思われるイワヒバリの生息分布を調査するため,調査の準備を進めている。イワヒバリの識別はホシガラスよりも難しいと思われるが,登山記録の投稿サイトからは順調に目撃記録を収集することができている。リモートセンシングデータを用いたGIS分析の準備を進めている。

種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているシロチドリ,ヒクイナ,ヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイ,年変動の大きい特定の冬鳥等の生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 リュウキュウサンショウクイはこれまで東日本は越冬期の記録中心だったが,繁殖分布が関東へと広がっていることなど明らかになってきた。

生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,カッコウ類やシギ・チドリなどの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。共同研究で気象との関係の解析を進めており,渡来の中央値の予測はある程度の精度でできそうなことが見えてきている。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2020年は2019年に続き,全般的に遅く,春先の寒さが影響していると考えられた。


鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類を,身近な鳥としてツバメをモデルケースとして事業を実施しています。

カワウ保護管理推進事業

  • 広域保護管理の推進
    委託主 環境省,中部地方環境事務所,関西広域連合
    目的 カワウの広域的かつ計画的な管理を推進する
    内容と成果 中部近畿カワウ広域協議会の運営や情報共有を支援し,関西広域連合域におけるカワウの生息状況や被害状況の調査を実施し,委員や講師として全国の都道府県のカワウの管理を指導し,個体群管理の推進について専門家を集めた検討を行ったほか,都道府県の行政担当者向けに管理計画の作成に関する研修会の開催や,中部近畿において行政向けの勉強会の開催を行った。

その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 独自事業
    目的 ツバメの調査と保護を行い,その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 株)シーアイシーのスポンサーでツバメのフン受け約1000枚を道の駅,鉄道の駅,その他の施設に無償配布。一般には200枚を無償配布した。さらに200枚を関東エリアと和歌山市周辺の高速道路,および京王電鉄では,有償でフン受けを購入して利用してももらった。Nexco西日本に協力して香川県の高松自動車道の3か所の上下6つのサービスエリアにツバメの人工巣を設置し,十数個すべてをツバメが利用した。
  • アセアンフライウェイネットワーク支援事業
    委託主 アセアンフライウェイネットワーク
    目的 東アジアーオーストラリア地域フライウェイ地域での水鳥モニタリングの体制の構築
    内容と成果 11月東アジアーオーストラリア地域フライウェイ会議内で事業について討論に守屋が参加,工程を確認,日本側からは湿地の調査の専門家としてアセアンの参加国から調査について依頼があるとのことだったが打診はなかった。5月に進捗報告の会議が開かれ佐藤が参加,今年度初冬に現地調査(ベトナム)が設定される予定。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 16か所の調査地で9月から翌年5月もしくは6月まで間,月3回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の16か所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。
  • オオタカモニタリング調査
    委託主 環境省
    目的 希少種解除後のオオタカの状況を監視
    内容と成果 6地域のモニタリングおよびアンケート調査で,オオタカの希少種解除後の状況をモニタリングする体制を構築した。オオタカの繁殖成績が低下している可能性が示された。
  • 千葉県コブハクチョウ調査
    委託主 千葉県
    目的 外来鳥であるコブハクチョウの管理手法を検討する
    内容と成果 手賀沼を中心に千葉県ではコブハクチョウが繁殖しており,一部で農業被害が報告されている。現状を把握するため,2月に手賀沼,印旛沼,利根川を調査したところ,177羽が確認され,そのほとんどが下手賀沼の一部(114羽)に生息していた。7月にも同様の調査を県から委託を受けており,生息調査に加え,モニタリング手法の簡易化の検討や個体数管理の手法の検討なども実施する。


自然環境の改善の立案提言事業

今年度は実施せず


自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,さまざまな調査の研修会も実施しました。

  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが23件集まり,審査によってこの中から9件の支援先プランを選定し,これにバードリサーチからの1件を追加して10件を支援対象とした。このリストをもとに寄付を募り,403票の投票と121万1千円の寄付が得られた。この寄付を得票数に応じて支援先に配分し贈呈した。
  • みにクル
    宇都宮中央公園において定期的な鳥類調査を,春期,秋期,冬期にシギ・チドリ類調査をおこなった。調査において参加者を募り調査を体験してもらった。
    TORI-quizなどを拡充して,ホームページコンテンツを整理した。
  • 動画配信
    繁殖分布調査やツバメのフン受けなどのバードリサーチの活動の宣伝,学習コンテンツの配信をする他,主に地方に在住していて鳥類学に関連するセミナーや講義を受ける機会を得にくい会員を対象として,YouTubeによる動画配信を行った。毎週金曜に研究者によるライブ配信を行い,視聴者からの寄付を発表者に還元している。
  • ホームページ等の更新
    バードリサーチの活動状況を広報するため,ホームページ,ブログ,Facebookページを随時更新した。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを随時発行した.水鳥通信を1回発行した。ニュースレターは全文無料公開とした。
  • 研究誌の発行
    6本の論文を掲載した第15巻を2019年12月に発行した.また第16巻の論文は2本掲載がきまっている。
  • 年報の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,年報を発行した.


貸借対照表

NPO法人 バードリサーチ

2020年6月30日 現在 (単位:円)

資産の部
【流動資産】
146,790,691
 現金預金
143,955,470
 
 未収入金 46,900
 前払費用
2,788,321
 
【固定資産】
2,935,878
 船舶レーダー
1
 
 敷金 536,000   
 ソフトウェア 2,399,877
資産合計   149,726,569
負債の部
【流動負債】    
 未払金
999,025
 
 未払い消費税
2,407,800
 
 預り金
1,417,841
 
 前受け金
21,576,008
 
負債合計  
26,400,674
正味財産の部
前期繰越正味財産 115,341,995  
当期正味財産増減額
7,983,900
 
正味財産合計
123,325,895
 
負債および正味財産合計
149,726,569
 



損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2019年7月1日   至 2020年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
1,992,000
 
寄付金収入
5,162,141
 
基礎情報の収集解析事業
33,303,507
 
保全施策の立案提言事業
54,330,540
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 2,044,699   
民間助成金 2,216,343
その他 1,226  
収入合計   99,050,456
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
13,091,332
 
 保全施策の立案提言事業
28,226,933
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
2,720,999
 
 人件費
35,410,286
 
【管理費】    
 人件費
2,593,383
 
 その他経費
8,284,623
 
支出合計  
90,327,556
法人税等  
739,000
当期収支  
7,983,900
前期繰越損益  
115,341,995
次期繰越損益  
123,325,895



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2019年7月1日   至 2020年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 1,992,000
 寄付金収入(一般) 1,981,141
 寄付金収入(繁殖分布調査) 1,970,000
 寄付金収入(研究支援) 1,211,000
 助成金収入 2,216,343
 雑収入 0
支出
 
 普及啓発事業893,976
 研究支援プロジェクト 1,251,262
 繁殖分布調査 997,586
 その他 1,128,243
 一般管理費等 2,747,838
当期収支* 2,351,579

*助成金で構築したさえずりナビのアプリケーションが減価償却の関係で費用計上されていないため(貸借対照表のソフトウェア:¥2,399,877),当期の収支が大きくなった