団体概要 > 2018年度バードリサーチ活動報告

2018年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてガビチョウやホシガラス等の調査をすすめています。

鳥類相のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギチドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチでモニタリングを継続した。各地で行なわれている探鳥会等の情報もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」によるデータ収集も行なった。環境省の受託を受け,仙台市,船橋市,大阪市において,モニタリングサイト1000の講習会を実施し,調査員の獲得,異なる調査の掛け持ちの促進,調査員のスキルアップを試みた。エイジス株式会社と共同で宮城県鳴瀬川(モニタリングサイト1000のサイト登録予定)に越冬しているハクチョウ類のカウントを実施した。
  • 全国鳥類繁殖分布調査
    委託主 自主事業
    目的 全国の鳥類の分布変化を明らかにするために調査を実施する。
    内容と成果 日本野鳥の会,自然保護協会,標識協会,山階,多様性センターなどと合同で調査を開始し,全国鳥類繁殖分布調査の4年目の調査を実施した。現時点で2300地点中1864地点の調査結果が届いている。越冬分布調査,東京や茨城の詳細調査など,派生調査も多く実施した。ホームページ

  • 高山帯鳥類調査
    委託主 自主事業
    目的 モニタリングが十分行われていない高山帯の鳥類を調査する。
    内容と成果 モニタリングが十分行われていない高山帯の鳥類を調査する。株式会社モンベルとの共同事業として,ホシガラスを対象に登山者へも呼びかけて分布調査を実施。2シーズンで,506名以上の参加が得られ,登山記録サイトの写真情報を調査することで,合わせて2684件の目撃情報が得られた。企画当初は制度の高い情報収集は困難と考えられていたが,本州については可能と考え,ハイマツ等の分布との関係を分析している。また,登山者向け媒体に高山の鳥に関する記事の掲載や,モンベルの寄付つきTシャツの掲載などを行ない,登山者に鳥に興味を持ってもらうための広報を行なった。

種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているシロチドリ,ヒクイナ,ヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイ等の生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 シロチドリの調査と普及啓発活動を行なった。繁殖分布調査と関連させゴールデンウィークにコロニー性鳥類の情報収集を行なったところ200件を超える情報が届いた。

生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,カッコウ類やシギ・チドリなどの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。一昨年から春の調査については,ロシア語サイトも作成し,ロシア,中国からの情報も集めはじめた。中国に力を入れる予定だったが実施できなかった。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2019年は全般的に遅く,カッコウ類が顕著だった。

調査機器の開発

  • さえずりナビの開発
    委託主 自主事業
    目的 鳴き声学習の支援ツール提供。および、一般のバードウォッチャーの観察記録を収集し、観察情報発信やデータ分析護に役立てるためのシステムを構築する。
    内容と成果 4-6月にアクセス合計が90万ページビューを超えた。普及イベントとして6月にフィールドノートを使ったインターネット版のバードソンを開催。153名が参加して1054カ所で観察が行われた。

  • ドローンによるガンカモ類調査の技術開発
    委託主 自主事業,宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団,環境省
    目的 ガンカモの群れが遠方にいる調査地や、個体数が非常に多い調査地において、ドローンによる空撮写真から個体数をカウントする技術を開発する。ガンカモがドローンを警戒しない接近距離を明らかにする。
    内容と成果 ガンカモ類のドローンへの警戒を調べる接近調査を野付湾と佐潟で実施した。3年間のデータを分析した報告書が伊豆沼・内沼環境保全財団から出版された。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類を,身近な鳥としてツバメをモデルケースとして事業を実施しています。

カワウ保護管理推進事業

  • 広域保護管理の推進
    委託主 環境省,自然環境研究センター(環境省事業),関東地方・中部地方の各環境事務所,関西広域連合
    目的 カワウの広域的かつ計画的な管理を推進する
    内容と成果 関東・中部・近畿のカワウ広域協議会の運営や情報共有を支援し,関西広域連合域におけるカワウの生息状況の調査を実施し,委員や講師として全国の都道府県のカワウの管理を指導し,個体群管理の推進について専門家を集めた検討を行ったほか,都道府県の行政担当者向けに管理計画の作成に関する研修会の開催や,中国四国において行政向けの勉強会の開催を行った。

その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 独自事業
    目的 ツバメの調査と保護を行い、その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 ツバメのフン受け約2000枚を道の駅・サービスエリアなどに無償配布。関東エリアの高速道路,京王電鉄,石川県にはフン受けを有償で購入してもらった。銀座にあるデパート松屋にツバメの人工巣を設置し,ツバメが繁殖した様子をNHKダーウィンが来たが撮影。220,500円の寄付金が集まった。
  • アセアンフライウェイネットワーク支援事業
    委託主 アセアンフライウェイネットワーク
    目的 東アジアーオーストラリア地域フライウェイ地域での水鳥モニタリングの体制の構築
    内容と成果 11月東アジアーオーストラリア地域フライウェイ会議内で事業について討論に守屋が参加,工程を確認,日本側からは湿地の調査の専門家としてアセアンの参加国から調査について依頼があるとのことだったが打診はなかった。5月に進捗報告の会議が開かれ佐藤が参加,今年度初冬に現地調査(ベトナム)が設定される予定。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 16か所の調査地で9月から翌年5月もしくは6月まで間,月3回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の16か所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。
  • オオタカモニタリング調査
    委託主 環境省
    目的 希少種解除後のオオタカの状況を監視
    内容と成果 6地域のモニタリングおよびアンケート調査で,オオタカの希少種解除後の状況をモニタリングする体制を構築する。


自然環境の改善の立案提言事業

今年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,さまざまな調査の研修会も実施しました。

  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが20件集まり,審査によってこの中から9件の支援先プランを選定し,これにバードリサーチからの1件を追加して10件を支援対象とした。このリストをもとに寄付を募り,380票の投票と114万円の寄付が得られた。この寄付額を得票数に応じて支援先に分配した。
  • みにクル
    富士山において亜高山帯植林地の伐採が鳥類相に与える影響の調査を1回実施したほか,宇都宮中央公園において定期的な鳥類調査を,春期,秋期,冬期にシギ・チドリ類調査をおこなった。調査において参加者を募り調査を体験してもらった。TORI-quizなどを拡充して,ホームページコンテンツを整理した。
  • ホームページ等の更新
    バードリサーチの活動状況を広報するため,ホームページ,ブログ,Facebookページを随時更新した。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを随時発行した.水鳥通信を1回発行した。ニュースレターは全文無料公開とした。
  • 研究誌の発行
    9本の論文を掲載した第14巻を2017年12月に発行した.また第15巻の論文は3本掲載がきまっている。
  • 年報の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,年報を発行した.


貸借対照表

NPO法人 バードリサーチ

2019年6月30日 現在 (単位:円)

資産の部
【流動資産】
 134,897,817
 現金預金
134,078,205
 
 前払費用
819,612
 
【固定資産】
3,714,085
 船舶レーダー
5
 
 敷金 536,000   
 ソフトウェア 3,178,080
資産合計   138,611,902
負債の部
【流動負債】    
 未払金
1,661,375
 
 未払い消費税
1,529,400
 
 預り金
1,276,047
 
 前受け金
18,803,085
 
負債合計  
23,269,907
正味財産の部
前期繰越正味財産 110,508,256  
当期正味財産増減額
4,833,739
 
正味財産合計
115,341,995
 
負債および正味財産合計
138,611,902
 



損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2018年7月1日   至 2019年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
2,055,000
 
寄付金収入
4,544,599
 
基礎情報の収集解析事業
36,324,329
 
保全施策の立案提言事業
51,398,860
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 3,967,101   
民間助成金 4,985,000
その他 1,180  
収入合計   103,276,069
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
18,225,472
 
 保全施策の立案提言事業
31,740,565
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
1,582,334
 
 研究支援
1,257,632
 
 人件費
34,539,675
 
 旅費交通費
598,950
 
【管理費】    
 人件費
2,569,983
 
 その他経費
6,770,419
 
支出合計  
97,285,030
法人税等  
1,157,300
当期収支  
4,833,739
前期繰越損益  
110,508,256
次期繰越損益  
115,341,995



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2018年7月1日   至 2019年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 2,055,000
 寄付金収入(一般) 1,148,999
 寄付金収入(繁殖分布調査) 2,070,000
 寄付金収入(研究支援) 1,140,000
 寄付金収入(ツバメ) 185,600
 助成金収入 4,985,000
 雑収入 0
支出
 
 普及啓発事業815,154
 研究支援プロジェクト 1,257,632
 ツバメプロジェクト 238,332
 繁殖分布調査 4,617,626
 伊豆諸島調査 2,007,199
 その他 150,581
 一般管理費等 2,717,346
当期収支 -219,271