第4回バードリサーチ研究集会 報告

 第4回研究集会は、2008年10月11日(土)に北海道大学低温科学研究所で行ないました。


研究集会のプログラム

 13:00〜13:05 開会
 13:05〜13:45 局地風の観測と渡り鳥(藤吉康志:北海道大学)
 13:45〜14:15 ミヤマガラスの渡り衛星追跡 繁殖地の特定と渡りのタイミング
(高木憲太郎ほか:バードリサーチ)
 14:15〜14:45 積雪や寒波,温暖化の鳥への影響(植田睦之:バードリサーチ)
 
 15:00〜15:15 室蘭における猛禽類の渡りパターン(黒沢隆・黒沢令子)
 15:15〜15:30 室蘭から陸と海を渡るヒヨドリ(伴野俊夫)
 15:30〜15:45 札幌都市部で営巣するオオセグロカモメの生態
(小平大輔ほか)
 15:45〜16:00 北海道におけるカワウの分布拡大(加藤ななえ)
 16:00〜16:15 モニタリングサイト1000 ガンカモ類調査(神山和夫)
 
 16:30〜18:00 気象観測機器見学会
 
 19:30〜21:30 懇親会


集会のようす

 参加者は約50名,「渡り鳥と気象」というテーマで,低温科学研究所の藤吉康志先生に気象観測の際にノイズとして除かれていた鳥の観測データを逆手にとって鳥の渡りを観測しようという取り組みや,観測機器の発達により,今まで観測することができなかった大気の流れや空間構造がわかってきたこと,これが鳥の渡りの理解に役立てるのではないかといったお話を実際に観測した大気の流れを視覚化した映像をまじえて紹介していただきました.バードリサーチの高木からは,ミヤマガラスが海上を渡るタイミングが,降雨がなく風がない日の翌日になることなど気候や気温が鳥の生態に深くかかわっていると考えられる調査結果の発表がありました.植田からは気温や積雪の鳥に与える影響について,多くの事例をまじえて紹介しました.
 一般講演では,伴野俊夫さんから室蘭を通過する数万羽のヒヨドリについて,その渡りのルートについての報告がありました.海上を渡るものと陸沿いに進むものがあり,どのような条件でルートを選択するのか興味深いお話でした.ヒヨドリが渡っている様子を船上のビデオから撮影した映像も紹介され,大きなかたまりになったヒヨドリの群れがうねるように移動している様子が紹介されました.北海道大学の学生の小平大輔さんからは都市部に営巣するようになったオオセグロカモメについて報告いただきました.ビルの屋上に営巣し都市に流れる河川の川魚やゴミを採食しているとのことでした.さらに人間社会との軋轢についても研究を進めるとのことでした.
 ほかにバードリサーチから,室蘭の猛禽類の渡りパターン(黒沢ら),北海道のカワウの分布(加藤),モニタリングサイト1000のガンカモ調査について(神山)の活動報告を行いました.

約50名の皆さんにお越しいただきました。
ミヤマガラスの渡りについて発表する高木憲太郎(バードリサーチ・スタッフ)。


気象機器見学会のようす

 低温科学研究所では,周辺の気象状況を観測するために,さまざまな観測機器が屋上に設置してあります。上空の風を観測するための装置,上空の温度や湿度の鉛直分布を記録するための装置,上空の塵を観測するための装置,雲を記録するための装置など,見慣れない,面白そうな機器がたくさんです。また,それらの気象データと比較するためにバードリサーチの船舶レーダーでの鳥の観測も行なっているので,それも見ていただきました。

気象観測機器のデータをのぞき込む参加者の皆さん。