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2017年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてガビチョウやホシガラス,イソヒヨドリ等の調査をすすめています。

鳥類相のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギチドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。全国ガンカモ調査の事務局も受託した。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチでモニタリングを継続した。各地で行なわれている探鳥会等の情報もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」によるデータ収集も行なった。
  • 全国鳥類繁殖分布調査
    委託主 自主事業
    目的 全国の鳥類の分布変化を明らかにするために調査を実施する。
    内容と成果 日本野鳥の会,自然保護協会,標識協会,山階,多様性センターなどと合同で調査を開始し,全国鳥類繁殖分布調査の3年目の調査を実施した。現時点で2300地点中1500地点の調査結果が届いている。越冬分布調査,東京や茨城の詳細調査,伊豆諸島調査など,派生調査も多く実施した。

  • 高山帯鳥類調査
    委託主 自主事業
    目的 モニタリングが十分行われていない高山帯の鳥類を調査する。
    内容と成果 株式会社モンベルとの共同事業として、ホシガラスを対象に登山者へも呼びかけて分布調査を実施。1シーズンで、368名以上の参加が得られ、1628件の目撃情報を得ている。また、登山者向け媒体に高山の鳥に関する記事の掲載や、モンベルの寄付つきTシャツの掲載、登山者向けイベントへの出展などを行ない、登山者に鳥に興味を持ってもらうための広報を行なった。

種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているヒクイナとヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイ等の生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 繁殖分布調査と関連させゴールデンウィークにガビチョウ,イソヒヨドリ,ホンセイインコの情報収集を行なったところ400件を超える情報が届いた。
  • シロチドリ繁殖状況調査
    委託主 自主事業
    目的 シロチドリの分布や繁殖期の密度を調査し、総個体数を推計する。
    内容と成果 シロチドリの生息状況についての情報収集。九十九里浜において,営巣環境の選好、捕食者の特定を行った。保護柵の設置活動も継続。行政へ繁殖場所の情報提供を行い、看板や規制線の設置を行った。また、九十九里浜地域向けに観察会を開いて、砂浜の鳥類や生態系の啓発、調査への理解などの広報を実施した。地元の自治体の環境行政に働きかけ自律的な保護への取り組みを目指す。他地域とも交流し活動の水平展開を行う。

生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,カッコウ類やシギチドリなどの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。一昨年から春の調査については,ロシア語サイトも作成し,ロシア,中国からの情報も集めはじめた。今年は中国に力を入れる予定だったが実施できなかった。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2018年は春先のさえずりが早く,夏鳥のさえずりはやや早い程度だった。

調査機器の開発

  • さえずりナビの開発
    委託主 自主事業
    目的 鳴き声学習の支援ツール提供。および、一般のバードウォッチャーの観察記録を収集し、観察情報発信やデータ分析護に役立てるためのシステムを構築する。
    内容と成果 4月から本格稼働し、5-6月に最高8000/日アクセス。ニコン、コーワ、フジフィルムの広告を獲得。野鳥記録システムは従来のフィールドノートと合わせて年間1万地点が入力されている。

  • ドローンによるガンカモ類調査の技術開発
    委託主 自主事業,宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団,環境省
    目的 ガンカモの群れが遠方にいる調査地や、個体数が非常に多い調査地において、ドローンによる空撮写真から個体数をカウントする技術を開発する。ガンカモがドローンを警戒しない接近距離を明らかにする。
    内容と成果 茨城県の北浦で調査を実施。前年と同様で、水面にいるガンカモ類はドローンに強い警戒心は持たない傾向が見られた。数千羽規模のカモ類の群れを撮影してカウントする手法を開発した。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類をモデルケースとして事業を実施しています。

カワウ保護管理推進事業

  • 広域保護管理の推進
    委託主 環境省,自然環境研究センター(環境省事業),関東地方・中部地方の各環境事務所,関西広域連合
    目的 カワウの広域的かつ計画的な管理を推進する
    内容と成果 関東・中部・近畿のカワウ広域協議会の運営や情報共有を支援し、関西広域連合域におけるカワウの生息状況の調査を実施し、委員や講師として全国の都道府県のカワウの管理を指導し、広域的な管理について専門家を集めた検討を行ったほか、適切なカワウの管理を推進するため、都道府県の行政担当者向けに管理計画の作成に関する研修会を開催した。

その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 独自事業
    目的 ツバメの調査と保護を行い、その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 フン受け・ポスター・マニュアルを道の駅・サービスエリアなどに無償配布。フン受けは関東エリアの高速道路と京王線に購入してもらった。93名の方から181,650円の寄付金が集まった。床置き型フン受けを開発し、Amazonで販売を始めた。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 16か所の調査地で9月から翌年5月もしくは6月まで間,月3回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の16か所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した
  • オオタカモニタリング調査
    委託主 環境省
    目的 希少種解除後のオオタカの状況を監視
    内容と成果 6地域のモニタリングおよびアンケート調査で,オオタカの希少種解除後の状況をモニタリングする体制を構築する。


自然環境の改善の立案提言事業

今年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,船舶レーダーを使った調査の研修会も実施しました。

  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが16件集まり,審査によってこの中から9件の支援先プランを選定した。このリストをもとに寄付を募り,461票の投票と146万8千円の寄付が得られた。この寄付額を得票数に応じて支援先に分配した。
  • ID Bird
    4月から年6回程度の開催を目標に鳥類の観察・識別講座と鳥類調査の体験を行う。渡るタカの観察調査、東京湾のシギチドリ類を実施した。参加者は平均して約5名。今年度は現地観察会は休止して、今までの観察会の説明資料やTORI-quizなどを利用して、ホームページコンテンツを整理する。
    富士山において鳥類の垂直分布調査を1回実施したほか,宇都宮中央公園において定期的な鳥類調査を,不定期にシギチドリ類調査を中心に各員が担当する調査において参加者を募り調査を体験してもらった。
  • 参加型調査『みにクル』の開催
    宇都宮中央公園において,定期的な鳥類調査を,不定期にシギチドリ類調査を中心に各員が担当する調査において参加者を募り調査を体験してもらった。
  • ホームページ等の更新
    バードリサーチの活動状況を広報するため,ホームページ,ブログ,Facebookページを随時更新した         
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを随時発行した.水鳥通信を春秋冬計3回発行した.
  • 研究誌の発行
    12本の論文を掲載した第13巻を2017年12月に発行した.また第14巻の論文は6本掲載がきまっている。
  • 年報の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,年報を発行した.


貸借対照表

NPO法人 バードリサーチ

2018年6月30日 現在 (単位:円)

資産の部
【流動資産】
 131,991,651
 現金預金
128,149,471
 
 前払費用
3,842,180
 
【固定資産】
3,613,971
 船舶レーダー
158,836
 
 敷金 536,000   
 ソフトウェア 2,919,135
資産合計   135,605,622
負債の部
【流動負債】    
 未払金
1,146,222
 
 未払い消費税
1,775,500
 
 預り金
1,410,744
 
 前受け金
20,764,900
 
負債合計  
25,097,366
正味財産の部
前期繰越正味財産  102,249,832  
当期正味財産増減額
8,258,424
 
正味財産合計
110,508,256
 
負債および正味財産合計
135,605,622
 



損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2017年7月1日   至 2018年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
1,799,000
 
寄付金収入
5,035,567
 
基礎情報の収集解析事業
33,741,799
 
保全施策の立案提言事業
55,718,319
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 2,549,157   
民間助成金 5,347,589
その他 2,550,299  
収入合計   104,192,573
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
17,399,124
 
 保全施策の立案提言事業
29,028,118
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
2,114,525
 
 研究支援
1,483,367
 
 人件費
34,902,159
 
 旅費交通費
562,038
 
【管理費】    
 人件費
1,832,956
 
 その他経費
6,982,062
 
支出合計  
94,304,349
法人税等  
1,629,800
当期収支  
8,258,424
前期繰越損益  
102,249,832
次期繰越損益  
110,508,256



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2017年7月1日   至 2018年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 1,799,000
 寄付金収入(一般) 1,273,377
 寄付金収入(繁殖分布調査) 1,970,000
 寄付金収入(研究支援) 1,468,000
 寄付金収入(研究ツバメ) 324,190
 助成金収入 5,347,589
 雑収入 0
支出
 
 普及啓発事業2,114,525
 研究支援プロジェクト 1,483,367
 ツバメプロジェクト 322,595
 繁殖分布調査 5,290,544
 シロチドリ調査 263,669
 高山帯調査 256,601
 さえずりナビ 401,677
 その他 92,550
 一般管理費等 1,977,804
当期収支 -21,176