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2015年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてツバメやヒクイナ,ヨタカ等の調査をすすめています。

鳥類相のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギチドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチでモニタリングを継続した。各地で行なわれている探鳥会等の情報もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」によるデータ収集も行なった。
  • 全国鳥類繁殖分布調査
    委託主 自主事業
    目的 全国の鳥類の分布変化を明らかにするために調査を実施する。
    内容と成果 日本野鳥の会,自然保護協会,標識協会,山階,多様性センターなどと合同で調査を開始した。この繁殖期から調査が始まり,現時点で900人以上の参加のもと,調査が進められている。

    種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているヒクイナとヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイの生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 リュウキュウサンショウクイの分布についての取りまとめを行ない,ニュースレターで公表した。分布の拡大が続き,関東でも見られるようになっており,引き続き情報収集を実施していく予定である
  • シロチドリ繁殖状況調査
    委託主 自主事業
    目的 シロチドリの分布や繁殖期の密度を調査し、総個体数を推計する。
    内容と成果 シロチドリの生息状況についての情報収集。砂浜での観察の困難さから、参加者は少ない。九十九里浜で調査した結果,抱卵期の死亡率が高いことがわかった。地元の自治体の環境行政に働きかけ、啓発・調査への理解などの広報を実施。

    生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,アオバズク,オオヨシキリ,ホトトギス,カッコウ,カルガモ,キビタキ,シギチドリの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。春の調査では,ロシアからの情報も集め,北海道からサハリンと,季節前線が移動していくこと,大陸側は日本よりも季節の進行が早そうなことが見えてきた。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2016年は留鳥や夏鳥のさえずりは全般的に早かった。

    調査機器の開発

  • さえずりナビの開発
    委託主 自主事業
    目的 現行のさえずりナビをバージョンアップし、一般のバードウォッチャーがスマートフォンから観察記録を入力して、データベース化し、観察情報発信や野鳥保護に役立てるためのシステムを開発する。
    内容と成果 開発を依頼する外注先を選定し、システム設計を行った。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類をモデルケースとして事業を実施しています。

カワウ基礎情報の収集

  • カワウの分布調査
    委託主 自主事業(2015年12月で終了)
    目的 カワウの生息状況の変化を把握し,管理手法などの提言を行なう。
    内容と成果 関東地方のねぐら入り個体数の調査を行なった。関東地方のカワウの個体数は安定しているが、ねぐらの箇所数は消滅と新規成立とが繰り返されている。
  • カワウの移動調査
    委託主 自主事業
    目的 移動の解明と広域的管理への活用
    内容と成果 行徳鳥獣保護区コロニーでカワウのヒナにカラーリングの標識を装着し,観察データを収集した。

    カワウ保護管理推進事業

  • 広域保護管理の推進
    委託主 環境省,関東地方・近畿地方・中国四国地方の各環境事務所,関西広域連合,山口県
    目的 広域管理のための情報共有を推進する
    内容と成果 関東・中部近畿・中国四国のカワウの生息状況等のデータのとりまとめとその分析や,ホームページを利用した情報発信と情報共有を支援した。

    風力発電と鳥類との共存

  • 陸上風力発電所での猛禽類のバードストライク関連調査
    委託主 環境省
    目的 風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収集
    内容と成果 オジロワシ等のワシ類の行動調査を行ない,立地策定のための手引きを発行した。
  • 洋上風力発電所でのバードストライク軽減のための調査
    委託主 新エネルギー・産業技術総合開発機構
    目的 洋上風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収集
    内容と成果 まだ鳥の状況があまりわかっていないので,洋上風力発電試験施設周辺で,レーダを使った調査およびGPSロガーを使ったオオミズナギドリの追跡を行なった。
  • バードストライク防止のための鳥レーダの開発
    委託主 新エネルギー・産業技術総合開発機構・環境省
    目的 バードストライクの問題を軽減するための技術開発
    内容と成果 アセスメントおよび風車の運転調整のために,ワシなどの接近を感知するシステムを開発するため,3次元レーダおよび複数のレーダの画像処理による3次元把握の手法開発を進めた。

    その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 独自事業
    目的 ツバメの調査と保護を行い、その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 多くの人の目に留まる施設にフン受けを設置してもらうことに注力し、全国の道の駅と高速道路を中心に、そのほか一部の鉄道路線で、フン受け・ポスター・ツバメ対応マニュアル約1000セットの配布を行った。さらに人工巣による巣の誘導実験を埼玉県の道の駅と静岡市のサービスエリアで実施した。NHKニュースで取り上げられた他、京王線に設置されたフン受けのTwitterのリツィートが9000を越えるなどの反響があった。61名の方から350,520円の寄付金をいただいた。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 16か所の調査地で9月から翌年5月もしくは6月まで間,月3回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の16か所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。


自然環境の改善の立案提言事業

今年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,船舶レーダーを使った調査の研修会も実施しました。

  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが5件集まり,審査によってこの5件の支援先プランを支援の対象として選定した。このリストをもとに寄付を募り,212票の投票と67万1千円の寄付が得られた。この寄付額のうち64万6千円を得票数に応じて支援先に分配した。また、2011〜2013年度に支援した調査研究の成果の中から、北海道におけるヨタカの研究をバードリサーチ賞として表彰し、成果報告会を開催した。
  • ID Bird
    4月から年6回程度の開催を目標に鳥類の観察・識別講座と鳥類調査の体験を行う。森ヶ崎のコアジサシ調査、富士山の野鳥の実習をすでに実施した。参加者は平均して約5名。参加しやすいシステムやコンテンツの充実、地方への展開が課題。
  • 参加型調査『みにクル』の開催
    宇都宮中央公園において,定期的な鳥類調査を,不定期にシギチドリ類調査を中心に各員が担当する調査において参加者を募り調査を体験してもらった。
  • ホームページ等の更新
    バードリサーチの活動状況を広報するため,ホームページ,ブログ,Facebookページを随時更新した         
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを毎月1号,計12号を発行した.9月からはWEBニュースに変更し発行した.         
  • 研究誌の発行
    7本の論文を掲載した第11巻を2015年12月に発行した.また第12巻の論文は7本掲載がきまっている。
  • 年報の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,年報を発行した.
  • 野鳥手帖の発行
    山と渓谷社から「野鳥手帖」を発行した.売上が伸びなかったため,来年は発行しない。


損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2015年7月1日   至 2016年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
1,569,000
 
寄付金収入
2,200,888
 
基礎情報の収集解析事業
32,716,812
 
保全施策の立案提言事業
76,363,176
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 0   
民間助成金 0
その他 1,682,095  
収入合計   114,531,971
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
13,478,652
 
 保全施策の立案提言事業
37,566,007
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
2,555,577
 
 研究支援
839,290
 
 人件費
29,299,679
 
 旅費交通費
680,487
 
【管理費】    
 人件費
1,542,445
 
 その他経費
7,585,022
 
支出合計  
93,547,159
法人税等  
1,163,600
当期収支  
19,821,212
前期繰越損益  
71,827,793
次期繰越損益  
91,649,005



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2015年7月1日   至 2016年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 1,569,000
 寄付金収入(一般) 1,240,888
 寄付金収入(研究支援) 674,000
 寄付金収入(研究ツバメ) 286,000
 助成金収入 翌期繰越し
 雑収入 579,166
支出
 
 普及啓発事業2,555,577
 寄付金支出(研究支援) 839,290
 寄付金支出(ツバメ) 210,316
 助成金支出 翌期繰越し
 独自調査費 103,655
 一般管理費等 1,687,717
当期収支 -1,047,501