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2012年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてツバメやカワウ,ヨタカ等の調査をすすめています。

鳥類のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業ほか
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギチドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。モニタリングサイト1000でモニタリングされていない都市域については,独自のベランダバードウォッチでモニタリングを継続した。各地で行なわれている探鳥会等の情報もモニタリングに役立てるためのデータベース「フィールドノート」をバージョンアップし,より入力しやすくした。
  • 冬鳥ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 冬鳥の生息状況の長期的なモニタリングを行なう
    内容と成果 2006年からスタートした調査も今年で7年目となった。秋からカラ類やキクイタダキなどが多いという話題があったため,それらについての情報収集も行ない,低地では多く,標高の高い場所では逆に少ないところもあったことより(木の実の凶作などで)低地に移動した可能性が示された。

    種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているヒクイナとヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイの生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 ヨタカの生息状況アンケートを新たに開始し,71件の情報があつまったが,データの多くは1名の調査員に占められており,夜行性の鳥の一般参加の調査の難しさがわかった。
  • 雄雌調査
    委託主 自主事業
    目的 モズ,ジョウビタキ,ルリビタキの雄雌の分布や利用環境を明らかにする。
    内容と成果 モスの越冬分布は雄がより北までいることがわかった。

    生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,アオバズク,オオヨシキリはウグイス,ヒバリ,ツバメ,アオバズク,オオヨシキリ,ホトトギス,カッコウ,カルガモ,キビタキ,シギチドリの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。ツバメの飛来が西日本は早く北日本は逆に遅かったことなどがわかった。情報件数は安定して多く寄せられた。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 ICレコーダ,ライブ音源配信の聞き取り,巣箱の温度ロガーなどを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。2013年はさえずりのピーク期間が短く,また,ヤマガラの繁殖期は早かったことなどがわかった。

調査機器の開発

  • さえずりナビの開発
    委託主 自主事業
    目的 調査に参加する敷居を高くしている鳴き声による鳥の識別を調査員が自分で学習できるように,電通大と共同でアプリケーションの開発を行なった。
    内容と成果 アプリケーションの利用者数は増加しており,2万人以上が利用している。現在入力システムの搭載,アンドロイド対応する次期バージョンのアプリがまもなく公開。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類をモデルケースとして事業を実施しています。

   カワウ基礎情報の収集

  • カワウの分布調査
    委託主 特定非営利活動法人行徳野鳥観察舎友の会(千葉県事業),自主事業
    目的 カワウの生息状況の変化を把握し,管理手法などの提言を行なう。
    内容と成果 関東地方のねぐら入り個体数を調査で、関東地方のカワウの個体数は安定しているが、ねぐら箇所数はまだ増加していることが分かった。
  • カワウの移動調査
    委託主 自主事業
    目的 移動の解明と広域的管理への活用
    内容と成果 :東京湾沿岸にある3つのコロニーでカワウのヒナにカラーリングの標識を装着し,観察データを収集した。行徳生まれの個体が青森県むつ市のコロニーで発見された。

    カワウ保護管理推進事業

  • 保護管理技術者育成研修会
    委託主 自然環境研究センター(環境省事業)
    目的 カワウの広域保護管理手法の普及と教育
    内容と成果 カワウのねぐら・コロニーの分布管理と,個体数管理について,それぞれ名古屋と千葉で研修会を開いた。ビニールテープを用いたねぐら除去手法や,エアライフルを用いたシャープシューティングといった最新技術を核とした研修で,関心を集めた。
  • 広域保護管理の推進
    委託主 環境省,関西広域連合
    目的 広域管理のための情報共有の推進と,カワウの生息状況や被害等の情報収集,生息状況調査と広域管理計画骨子の作成
    内容と成果 関東および中部近畿のカワウの生息状況等のデータのとりまとめとその分析や,ホームページを利用した情報発信と情報共有を支援した。中国四国地方における広域保護管理の検討のために,カワウの生息状況や被害状況などの情報収集や現地の行政と漁協に対するヒアリング調査を行なった。関西広域連合全域のカワウの生息状況を年4回調査し、その生息数や季節変化を明らかにした。また,広域保護管理計画の作成のため各種の知見を提供し,骨子の検討を前進させた。

    風力発電と鳥類との共存

  • 陸上風力発電所での猛禽類のバードストライク関連調査
    委託主 環境省
    目的 風力発電のバードストライクの問題を軽減するための基礎資料の収集
    内容と成果 バードストライクの危険の少ない陸上風力発電所の立地を選ぶ基礎資料として,オジロワシ等のワシ類の行動調査を行ない,海岸の崖から離れることでバードストライクのリスクを大きく減らせることを示した。また,アセスメントのスクリーニングのための基礎資料収集業務に委員として関わった。

    その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 環境省
    目的 ツバメの調査と保護を行い、その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 保護活動として、段ボール製の組み立て式フン受けを製作し、24名の方から222,000円の寄付が集まった。フン受けはツバメが繁殖している道の駅約100カ所と、寄付者で希望する方に送付した。調査活動として、埼玉県と長野県の複数の道の駅のツバメの巣に温度計を埋め込み、繁殖時期の調査を行っている。さらに、石川と韓国の小学生のツバメ調査を支援するため、HP作成や、韓国のツバメシンポジウムでの発表を行った。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 16箇所の調査地で9月から翌年5月もしくは6月まで間,月3回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の16箇所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。
  • 知床海鳥調査
    委託主 環境省
    目的 ケイマフリを中心とした海鳥の現況と,観光船による採食の妨害の共存策を検討する
    内容と成果 調査結果の普及啓発を行なった。


自然環境の改善の立案提言事業

  • 本年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,船舶レーダーを使った調査の研修会も実施しました。

  • 研究集会の開催
    研究集会を2013年4月に熊本県荒尾市で開催した。研究例会(研究集会の簡易版)は2012年8月にツバメについて,12月にガンカモと博物館見学として開催した。また鳥学講座2013年2月に「ジオロケータ」について開催した。また,モニタリングサイト1000の事業の中での集会を森林について5か所,シギチドリ,ガンカモについてそれぞれ1か所で開催した。
  • 調査研究支援プロジェクト
    調調査研究のプランが14件集まり,審査によってこの中から8件の支援先プランを選定した。このリストをもとに寄付を募り,200票の投票と69万5千円の寄付が得られた。この寄付額のうち62万5千円を得票数に応じて支援先に分配した。。
  • ホームページの開設
    調査プロジェクトの内容や結果をホームページに随時掲載した。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを毎月1号,計12号を発行した.各号の概要版はニュースメールとしてテキストで配信し,ホームページにも公開した。
  • 研究誌の発行
    12本の論文を掲載した第7巻を2011年12月に発行した.また第8巻の論文を現時点で6本掲載,査読中の論文が2本ある。科学雑誌の公開システムJ-stage上の論文への月間アクセス数は日本鳥学会誌を超えるなど,ある程度,論文雑誌としての市民権は得つつあり,投稿数も徐々にだが増えてきている。
  • 参加型調査『みにクル』の開催
    狭山公園,宇都宮中央公園において,定期的な鳥類調査をおこなった。また,不定期に各員が担当する調査において参加者を募り調査を体験してもらった。

損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2012年7月1日   至 2013年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
1,292,000
 
寄付金収入
3,664,854
 
基礎情報の収集解析事業
36,739,200
 
保全施策の立案提言事業
52,754,780
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業 499,421   
民間助成金 0
その他 71,829  
収入合計   90,065,230
支出の部
【研究費】    
基礎情報の収集解析事業
14,620,797
 
保全施策の立案提言事業
30,028,836
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業
539,015
 
研究支援費
734,696
 
ツバメプロジェクト費
91,184
 
旅費交通費
745,798
 
人件費 30,409,483
【管理費】
35,066,057
 
支出合計  
83,962,612
当期収支  
11,059,472
前期繰越損益  
29,728,562
次期繰越損益  
38,300,834