|
特定非営利活動法人 バードリサーチ
本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法を開発するために,レーダーを用いた手法や音声認識の手法を,また特定の種にしぼった情報収集としてツバメやヒクイナ,ミヤマガラスの調査をすすめています。
- モニタリング事業
委託主 |
環境省,WWF(環境省事業),マイクロソフト助成,自主事業ほか |
目的 |
環境省のモニタリングサイト1000をとおして日本の鳥類の状況をモニタリングすることを目指す。また,独自に情報収集のためのデータベースを整備し,鳥類の生息状況の情報収集を行ない,生息状況の変化の原因を明らかにする。 |
内容と成果 |
モニタリングサイト1000については,森林と草原の鳥類および干潟のシギチドリ類についての運営に関わり,データの蓄積や解析を行なった。マイクロソフト助成金ではWEBデータベース「フィールドノート」のたちあげと整備を行ない,観察記録のデータベース化をすすめた。また独自事業としてベランダバードウォッチ,季節前線ウォッチ,探鳥会DBを継続し,会員外を含めた多くの人が鳥の調査に興味を持つきっかけをつくった。 |
- レーダーを用いた渡り鳥調査手法開発調査
委託主 |
環境省,文部科学省 |
目的 |
環境省事業ではウィンドプロファイラという風を探知するレーダーにより渡り鳥のモニタリングが出来ないかを検証することを,文部科学省委託研究では船舶レーダーをもちいて鳥由来のウイルスを持ち込む可能性の高い鳥についてその渡り経路を明らかにすることを目的とした。 |
内容と成果 |
環境省調査では和歌山などで現地調査を実施し,「渡り鳥エコー」と呼ばれていたエコーが本当に鳥の可能性が高いことを明らかにした.文部科学省委託研究では東京大学樋口研とともに,カモ類やミヤマガラスの衛星追跡調査を行なった。それを補完するために,船舶用レーダーを使ったミヤマガラスの渡り追跡を出雲で実施し,出雲から直接朝鮮半島に海越えをしていることわかった。またミヤマガラスについては全国的な飛来情況やその季節変化についての情報収集を行なった。 |
- 音声認識装置の開発
委託主 |
熊本大学(環境省事業) |
目的 |
調査があまり進んでいない夜行性鳥類の生息状況調査を行なうために音声の自動認識装置を開発する。開発期間は2年間である。 |
内容と成果 |
自動認識装置の辞書にするために夜行性の鳥の音を収集し,それをもとに熊本大学で音声認識用のソフトウェアを開発した。また,自動認識装置の録音装置を何にしたらよいのかを検討するために実験を行ない,適した機材を選定した。 |
- ツバメかんさつ全国ネットワーク
委託主 |
自主事業 |
目的 |
ボランティア参加者の協力を得て,全国的なツバメの繁殖成功率,集団ねぐらの位置と個体数などを明らかにする。 |
内容と成果 |
ツバメの繁殖状況をWebデータベースで記録した。2007年は約240名の参加者から約650巣の報告があり,2006年の結果を解析したところ,河川や水田近くの巣では巣立ちヒナ数がやや多い傾向が分かった。集団ねぐらの調査も行ない,東京の多摩川流域ツバメ集団ねぐら調査連絡会,日本野鳥の会近畿ブロックのねぐら調査と連携して集団ねぐらの情報を集積した。2006年7〜8月の調査では51カ所のねぐらについて個体数を記録し,ツバメが街路樹もねぐらとしていることがわかった。 |
- ヒクイナ生息状況調査
委託主 |
自主事業 |
目的 |
減少していると考えられているヒクイナの生息状況とその原因を明らかにする |
内容と成果 |
ホームページで現地調査とアンケートへの協力のお願いをした結果,2006年には秋田,福島,茨城,栃木,千葉,愛知,岐阜,大阪,兵庫,岡山,山口,熊本,鹿児島,沖縄などから,現地調査とアンケート調査あわせて23人より情報が寄せられた。その結果, 12か所から少なくとも36羽の生息記録が得られた。ヒクイナが生息していた環境は,水田や河川,池沼の湿地状の草むらで,草丈がせいぜい1.5mの植物が生育し,地表に20cm以下の深さで水が覆っている環境だった。ヒクイナは東日本では少数が確認されただけだったが,西日本ではまだ普通に生息していることがわかった。しかし,西日本でも,近年減少傾向にあると記されたアンケートがあった。さらに多くの地域から情報が得られるように,現在も継続して情報収集を行なっている。 |
- 飛翔性昆虫調査
委託主 |
自主事業 |
目的 |
鳥類の減少に食物である飛翔性昆虫の減少が影響していると考えられるので,その調査手法について検討する |
内容と成果 |
自動販売機に集まる虫を数える「自動販売機トラップ」で大まかなモニタリングが出来ることが明らかになった。現在,全国での調査を実施中である。 |
- ミヤマガラス初認調査
委託主 |
自主事業 |
目的 |
ミヤマガラスの渡来ルートやそのパターンを明らかにする。 |
内容と成果 |
会員からミヤマガラスの初認の記録を集めた。その結果,渡来が北と西の両方から進んでいることが昨年のシーズンに引き続き明らかになり,複数のルートがあることが裏付けられた。また,日本海側から太平洋側に順に初認の報告が得られ,渡来のパターンを示していることが示唆された。 |
本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウを,希少種として猛禽類をモデルケースとして事業を実施しています。
- カワウ保護管理推進事業
-
委託主 |
環境省,武蔵丘陵森林公園,自主事業ほか |
目的 |
バードリサーチが所有するカワウの生態と調査の知見,保護管理の知見を活かして,広域協議会や都道府県の計画の策定などや,ねぐらやコロニーの管理,全国の行政担当者向けの研修会などに協力しつつ,カワウの保護管理をより良いものにするよう誘導することを目的として実施した。 |
内容と成果 |
全国的な保護管理の推進としては,関東と中部近畿の広域協議会に協力し,中部近畿広域協議会の指針の作成を支援した。また,一斉モニタリング調査の集計や捕獲個体のデータの集積と分析,一斉追い払いのコーディネートなどを行い,科学的な管理を推進することができた。また,データベースを構築し,広域協議会等の情報を電子化した。それらを利用するためのインターフェイスとしてWebサイトを作成し,合わせて情報公開と広域協議会の情報共有のためのツールを作成し,情報共有と公開を推進した。
都道府県の保護管理の推進としては,行政担当者向けの研修会において,先進的な県の保護管理計画を紹介や,地域実施計画の作成実習に関わり,具体性のある計画の策定の普及に貢献した。都道府県の計画策定の支援は,研修会のほかにも滋賀県のカワウ総合対策計画の策定にかかわり,検討協議会や,計画書の素案を作成に協力し,それらの改善に寄与した。さらにねぐらやコロニーの管理の推進としては,武蔵丘陵森林公園のコロニーの状況を調査しつつ,樹木の枯死や水質の問題などへの対応策の提案や検討会の運営を行ない,コロニー管理について議論を深めた。
|
- カワウの広域移動の衛星追跡調査
委託主 |
環境省 |
目的 |
関東のカワウの沿岸と内陸の個体の移動の証拠を掴むことと,中部近畿のカワウの移動実態を把握し,それをカワウの広域的な管理に活かすことを目的に実施した。 |
内容と成果 |
関東は第六台場と行徳,中部近畿は竹生島と弥富野鳥園で合わせて12羽のカワウを捕獲して送信機を装着し衛星追跡を行なった。駆除のために竹生島からの追跡は結果が得られなかったが,関東のカワウが秋に内陸に移動する証拠を得ることができ,また弥富野鳥園のカワウが春に浜名湖に移動することを明らかにすることができた。現在も追跡中のためは会計上の決算は行なわず,翌年に繰り越している。 |
- 千葉県カワウ生息状況調査報告
委託主 |
行徳野鳥観察舎友の会(千葉県・市川市事業) |
目的 |
カワウの有効な保護策をとりながらも増加を防ぐ事例を開発する。 |
内容と成果 |
千葉県内にあるねぐらの分布と個体数,環境,対策等を調査して,ねぐらごとに,「ねぐら・コロニー調査票」を作成し,それぞれのねぐらの特性などを整理した。 |
- カワウのねぐら&標識調査
委託主 |
自主事業 |
目的 |
カワウが分布域と個体数を回復してきたことに伴い,各地で漁業被害や樹木枯死被害が訴えられるようになってきた。適切な保護管理を行なうための基礎資料とするため,分布,個体数,年齢構成,若齢個体の分散について明らかにする。 |
内容と成果 |
関東各地のボランティア調査者約70名の協力を得て,各ねぐらで個体数と成鳥幼鳥比,営巣数の調査を行った。また,カワウ標識調査グループとの共同調査で,第六台場(東京都),行徳鳥獣保護区・小櫃川河口(千葉県)において,巣内ヒナに標識を装着した。 |
- オオタカ保護指針策定調査
委託主 |
環境省 |
目的 |
オオタカの保護指針を策定するための情報収集を行なう。 |
内容と成果 |
全国的なオオタカの生息状況のモニタリング体制の確立を図るために,山形,新潟,栃木,埼玉,静岡,岡山でオオタカの生息状況のモニタリングを開始した。また,栃木の道路事業実施地で道路事業がオオタカの繁殖に与える影響についての調査を行なった。調査対象のオオタカのうち2つがいが繁殖を行なわず,調査を翌年度に延期したため,会計上の決算は行なわず,翌年に繰り越している。
|
- 日ロオオワシ共同調査
委託主 |
環境省 |
目的 |
オオワシの保護を図るために,日本とロシアの協力関係を構築する。 |
内容と成果 |
次年度以降に行なう予定の日ロ共同調査の内容を検討する専門家会合を開催し,共同調査案を作成した。 |
本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,鳥の鳴き声の調査のための研修会も実施しました。
- ホームページの開設
調査プロジェクトの内容や結果をホームページに随時掲載した。
- ニュースレターの発行
ニュースレターを毎月1号,計12号を発行した.各号の概要版はニュースメールとしてテキストで配信し,ホームページにも公開した。 - 研究誌の発行
7本の論文を掲載した第2巻を2006年12月に発行した.また第3巻の論文を現時点で4本掲載している。
損益計算書
NPO法人 バードリサーチ
自 2006年7月1日 至 2007年6月30日 (単位:円)
事業損益の部
収入の部 |
会費収入 |
776,000
|
|
寄付金収入 |
3,158,650
|
|
基礎情報の収集解析事業 |
38,231,024
|
|
保全施策の立案提言事業 |
22,025,068
|
|
自然環境の改善の立案提言事業 |
0
|
|
普及啓発事業 |
1,271,790 |
|
その他 |
213,076 |
|
|
収入合計 |
|
65,675,608 |
支出の部 |
【研究費】 |
|
|
基礎情報の収集解析事業 |
34,932,044
|
|
保全施策の立案提言事業 |
18,288,406
|
|
自然環境の改善の立案提言事業 |
0
|
|
普及啓発事業 |
1,200,184
|
|
独自研究費 |
1,740,195
|
|
一般管理費 |
6,465,469
|
|
法人税等 |
105,486
|
|
消費税等 |
1,065,100
|
|
支出合計 |
|
63,736,881
|
当期収支 |
|
1,938,727
|
前期繰越損益 |
|
1,065,509
|
次期繰越損益 |
|
3,004,236
|
会費・寄付金収支決算書
NPO法人 バードリサーチ
自 2006年7月1日 至 2007年6月30日(単位:円)
収入 |
|
会費収入 |
776,000 |
寄付金収入 |
3,158,650 |
|
|
支出 |
|
ニュースレター等発行 | 115,295 |
独自調査費 |
977,188 |
データベース整備費 | 577,500 |
その他 |
70,212
|
一般管理費等 |
646,546 |
|
|
来期繰越金 | 1,547,909 |
|
|